憲法「裁判所(3)」
ここは、憲法「裁判所(3)」を講義している教室です。
今回は,下級裁判所についてお話しますね。
1.下級裁判所とその構成
(1)下級裁判所
下級裁判所については,以前お話しましたように,憲法76条1項を受けて,裁判所法で,高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,簡易裁判所の4つが設置されているのでした。
これらについて,もう少し詳しく見ておくと,
まず,高等裁判所は,8ヵ所の大都市(東京,大阪,名古屋,広島,福岡,仙台,札幌,高松)に置かれているほか,6ヵ所の都市にその支部が置かれています。
そして,東京高等裁判所には,特別の支部として,知的財産高等裁判所が設けられています。
次に,地方裁判所は,各都府県に1つずつと,北海道に4ヵ所で,合計50の地方裁判所が設けられていて,さらにその支部が203設けられています。
そして,家庭裁判所とその支部は,地方裁判所と同じ箇所に設けられ,特に必要性が高いところには,その出張所が設けられています。
最後に,簡易裁判所は,全国438ヵ所に設けられています。
(2)裁判官の構成
では,裁判官の人数について見ていきましょう。
まず,裁判所法では,次のように定められています。
裁判所法第5条第2項
下級裁判所の裁判官は、高等裁判所の長たる裁判官を高等裁判所長官とし、その他の裁判官を判事、判事補及び簡易裁判所判事とする。裁判官には,高等裁判所長官と,判事と,判事補と,簡易裁判所判事の4種類あるということですね。
そして,
裁判所法第5条第3項
最高裁判所判事の員数は、十四人とし、下級裁判所の裁判官の員数は、別に法律でこれを定める。これを受けて,裁判所職員定員法という法律に,下級裁判所の裁判官の人数が定められています。
裁判所職員定員法第1条
下級裁判所の裁判官の員数は、次の表のとおりとする。高等裁判所長官 八人
判事 一、八八九人
判事補 一、〇〇〇人
簡易裁判所判事 八〇六人
この裁判官が,各裁判所に配属されるんですんですね。
そして,各裁判所の裁判官の構成ですが,
高等裁判所は,高等裁判所長官と判事とで構成され,原則3人の裁判官の合議体で裁判します。
ただし,内乱罪など特定の場合には5人の裁判官の合議体で裁判します。
裁判所法第15条
各高等裁判所は、高等裁判所長官及び相応な員数の判事でこれを構成する。裁判所法第18条第2項
前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。但し、第十六条第四号の訴訟については、裁判官の員数は、五人とする。地方裁判所は,判事と判事補とで構成され,1人または3人の合議体で裁判します。
裁判所法第23条
各地方裁判所は、相応な員数の判事及び判事補でこれを構成する。裁判所法第26条
第1項:地方裁判所は、第二項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。第3項:前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。
家庭裁判所は,ほぼ地方裁判所の場合と同じで,判事と判事補とで構成され,1人または3人の合議体で裁判します。
裁判所法第31条の2
各家庭裁判所は、相応な員数の判事及び判事補でこれを構成する。裁判所法第31条の4
第1項:家庭裁判所は、審判又は裁判を行うときは、次項に規定する場合を除いて、一人の裁判官でその事件を取り扱う。第3項:前項の合議体の裁判官の員数は、三人とし、そのうち一人を裁判長とする。
そして,簡易裁判所は,簡易裁判所判事で構成され,1人の裁判官で裁判します。
裁判所法第32条
各簡易裁判所に相応な員数の簡易裁判所判事を置く。裁判所法第35条
簡易裁判所は、一人の裁判官でその事件を取り扱う。
以上が裁判官の構成についてですが,いちいち裁判所法をあげているのは,例えば行政書士試験の基礎法学などで,裁判制度を少し掘り下げて知りたいなと思ったら,裁判所法の条文に当たると,かなり詳しく知ることができるからです。
面倒だなと思われるかも知れませんが,是非条文に興味を持って頂きたいと願います。
(3)下級裁判所裁判官の任命など
次に,下級裁判所裁判官の任命などについてです。
まず,憲法の条文から見ていきましょう。
第80条第1項本文前半
下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。
このように,下級裁判所の裁判官は,最高裁判所の指名した者の名簿によって,内閣が任命します。
これを受けて,裁判所法では,次のように定められています。
裁判所法第40条第1項
高等裁判所長官、判事、判事補及び簡易裁判所判事は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。
これは憲法と同じですね。
ただし,注意しておかなければいけないのは,次の条文です。
裁判所法第40条第2項
高等裁判所長官の任免は、天皇がこれを認証する。
高等裁判所長官だけ,天皇の認証があるのです。
ですので,高等裁判所長官だけ,最高裁判所の名簿で指名され,内閣で任命され,天皇により認証されるという,3段階を踏みます。
では,最高裁判所の裁判官も含めて,任命等についてまとめておきましょう。
【図表1:最高裁判所の構成】
(4)任期
下級裁判所裁判官には,任期があります。次の憲法の条文を見てください。
第80条第1項本文後半
その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。
このように,任期は10年で,再任されることができます。
そして,最高裁判所裁判官のような国民審査には付されません。
(5)定年
定年については,最高裁判所裁判官のところで説明しましたね。
高等裁判所,地方裁判所,家庭裁判所の裁判官は65歳,簡易裁判所の裁判官は70歳でしたね。
(6)報酬
下級裁判所裁判官も,最高裁判所裁判官と同様に,報酬の定めが憲法に置かれています。
第80条第2項
下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。そして,この報酬は,在任中に減額することができません。
(終わり)
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