憲法「国会(1)」
ここは、憲法「国会(1)」を講義している教室です。
今回から,統治機構の分野の「国会」に入っていきます。
統治機構の分野は,とにかく条文を大切に学習が進められているかがカギとなります。
ですので,日本国憲法だけでなく,必要に応じて国会法や内閣法,裁判所法などの法律の条文もあげて説明をしていきますので,条文を読み込むことに,しっかりと慣れていって欲しいと思います。
1.権力分立
それではまず初めに,権力分立からお話をしていきますね。
例えばもし,国家権力が1人の国王に集中しているとすると,国はどうなると思われます?
たぶん,いわゆる絶対王政とか絶対君主制と言われていた時代をイメージされると思います。
暴君などが出てきて,国民の人権は軽んじられ・・・
歴史的には,そんなことがあったわけですね。
このような歴史を繰り返さないために,権力はいくつかに分けて別々の機関に担当させ,その機関同士がバランスを保ちながら抑制し合ったりするシステムが考え出されました。このシステムにより,国民の人権を守ろうとしたのです。
これが権力分立の考え方です。
その中でも,啓蒙思想家であるモンテスキューの「法の精神」で述べられた,三権分立が有名ですね。
三権分立とは,国家権力を,立法,司法,行政と3つに分け,それぞれを議会,裁判所,政府に担当させる,というものです。
日本国憲法も,国家権力を3つに分け,立法権を国会に,司法権を裁判所に,行政権を内閣及びその下部機関に,それぞれ担当させています。
次の図表1を確認してください。
【図表1:三権分立】
ですので,これから統治機構について学んでいくわけですが,主にこの国会,内閣,裁判所についての定めを見ていくことになります。
それでは,まずは国会から見ていきましょう。
2.国会の地位
日本国憲法では,前文で「権力は国民の代表者がこれを行使し」とあるように,代表民主制を採用することが定められています。
代表民主制とは,国民が選んだ代表者が,議会で国の運営のしかたを決定していく,というシステムです。
それを踏まえて,41条から「国会」についての定めが置かれています。
そして,憲法では,国会の地位を
・国民の代表機関
・国権の最高機関
・唯一の立法機関
という3つを定めています。
それでは,これらを条文を参照しながら,もう少し詳しく見ていきましょう。
(1)国民の代表機関
まずは,次の43条1項を見てください。
第43条1項
両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。両議院とは,あとで詳しく説明しますが,国会を構成している衆議院と参議院のことです。
この両議院つまり国会は,全国民を代表する選挙された議員で組織することが定められている条文です。
ここで,「全国民を代表する」とありますように,たとえ選挙区で選ばれた議員さんも,選挙区の有権者を代表するのではなく,あくまで全国民を代表するのだということです。
だから,選挙区の有権者のためだけに働くのではなく,全国民のために働かなければなりません。
(2)国権の最高機関
次に,41条を見てみましょう。
第41条
国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。この条文の前半で,国会は国権の最高機関であることが定められています。
ここで,「最高機関」の意味ですが,国会は主権者の国民によって直接選ばれた人で運営されるのであり,その職務は,国の運営の中心となる「ルール(法)作り」であることから,「最高機関」との肩書き(?!)が付けられただけで,何か特別の権限が与えられているという訳ではありません。
このような考え方を,政治的美称説と呼んでいます
ですので,なにも国会が,内閣や裁判所よりも特別に偉いんだ,という意味ではありません。
(3)唯一の立法機関
唯一の立法機関とは,さきほどの41条の後半に定められているもので,三権分立でいう立法権を担当するのは国会ですよ,ということを表しています。
ここで,「唯一」の意味ですが,2つありまして,
まず,1つは,憲法での特別の定めがない限り,国会以外で立法を行うことはできない,という意味があります。
これを,国会中心立法の原則といいます。
そしてもう1つは,国会の立法には,国会のみで行うことができ,例えば,国会の決定にプラスして内閣がオッケーを出さないと法律が作れない,とすることはできない,という意味があります。
これを,国会単独立法の原則といいます。
では,次の図表2でイメージを確認してみてください。
【図表2:唯一の立法機関】
3.二院制
さっき,43条を見たときに,ちらっとだけ触れましたが,国会は,衆議院と参議院とで構成されています。
これを,「2」つの「院」で成り立っていることから,二院制と呼びます。
それでは,この二院制について,条文に当たりながら見ていきましょう。
(1)衆議院と参議院
それでは,次の条文を見てください。
第42条
国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。このように,国会は,衆議院と参議院の2つの議院で構成されています。
【図表3:国会の構成】
なぜ二院制を採るのかというと,
・議会の専制の防止
・衆議院と政府との衝突の緩和
・衆議院の軽率な行為や過誤の回避
・民意の忠実な反映
などがあると考えられています。
ただ,最近では,参議院の存在意義について議論されていますので,今後の動向を見ていくことも大切ですね。
(2)両議院の関係
次に,両議院の関係についてです。
両議院の活動としては,次の2つの原則があります。
●同時活動の原則
次の条文を見てください。
第54条第2項
衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
同時活動の原則とは。衆議院と参議院は同時に開会し,同時に閉会するということで,衆議院は開会しているのに,参議院は閉会中ということはありませんよ,ということです。
例外としては,参議院の緊急集会があります。
●独立活動の原則
これは,条文には無いのですが,二院制から当然認められるものと考えられています。衆議院が法案Aを審議しているとき,参議院では法案Bについて審議している,ということが認められるという意味です。
例外としては,両院協議会があります。
【図表4:国会の活動原則】
あと,権能として,日本国憲法では,次の場合で衆議院の優越が定められています。
条文の内容については,後に学んでいきますので,ここでは衆議院の優越が定められていることを確認しておくに留めますね。
・内閣不信任決議権(69条)
・予算先議権(60条1項)
・法律の議決(59条)
・予算の議決(60条)
・条約の承認(61条)
・内閣総理大臣の指名(67条)
なぜ,衆議院の優越が定められているかというと,次に学びますが,衆議院議員の任期が参議院議員の任期より短いことと,衆議院には解散制度があることで,より民意を反映していると考えられているからです。
4.国会の活動
では次に,国会の活動について説明しますね。
まず,国会は,年がら年中会議を開いているわけではなくて,ある決められた期間のみ会議を開いています。この「決められた期間」のことを会期といいます。
そして,憲法では,この会期を「常会」「臨時会」「特別会」と3種類定めています
それでは,これらについてもう少し詳しくみていきましょう。
(1)国会の種類
国会の種類についてですが,国会に「黄色い国会」「桃色の国会」というような種類があるのではなく,「会議の種類」ということで,さっき言いました常会,臨時会,特別会の3つの会期のことをいいます。
①常会(通常国会)
常会とは,通常国会とも呼ばれていて,毎年1回行われる会議です。会社でいう定例会議みたいなものですね。
憲法では,次のように定められています。
第52条
国会の常会は、毎年一回これを召集する。そして,この定めを受けて,国会法という法律で,常会についてもう少し詳しく定められています。
法律科目としての「憲法」では,国会法の知識まで問われることはほとんどありませんが,一般知識の政治の勉強がてら,主な定めを見ておきますね。
国会法第2条
常会は、毎年一月中に召集するのを常例とする。
このように,常会は,毎年1月に召集されることが定められています。
そして,この常会では,予算案の議決が重要な案件であることから,予算国会とも呼ばれたりしますね。
次に,常会の期間ですが,次の国会法の条文を見てください。
国会法第10条
常会の会期は、百五十日間とする。但し、会期中に議員の任期が満限に達する場合には、その満限の日をもつて、会期は終了するものとする。このように,常会の会期は,原則150日間です。ですので,常会は毎年1月に召集されて,6月中に会期が終了することになりますね。 ただし,150日間で議決しておきたい案件を議決し切れなかったなどの理由で延長したいときは,次の条文で定められている通り,延長することができます。
国会法第12条第1項
国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。そして,その延長についてですが,
国会法第12条第1項
会期の延長は、常会にあつては一回、特別会及び臨時会にあつては二回を超えてはならない。と,常会は1回だけ延長することができます。
あと,常会の冒頭では,内閣総理大臣の「施政方針演説」の他,財務大臣の「財務演説」,外務大臣の「外交演説」,内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)の「経済演説」の,いわゆる政府四演説が行われます。
②臨時会(臨時国会)
常会以外で,必要があれば,国会が召集されますが,これを臨時会または臨時国会といいます。
次の憲法の条文を見てください。
第53条
内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。このように,必要ならば,内閣は臨時会の召集を決定することができます。
また,内閣が臨時会の召集を決定しないときでも,衆議院か参議院かどちらかで,総議員の4分の1以上の多数決で臨時会の召集の決定を要求すると,内閣は,臨時会の召集を決定しなければなりません。
例えば,参議院は242人の議員がいますので,その4分の1以上ということは,61人以上の多数決で,臨時会の召集の決定を要求することができますね。
あと,国会法で,
国会法第11条
臨時会及び特別会の会期は、両議院一致の議決で、これを定める。
と,会期について定められています。
ちなみに,両議院の議決が一致しないときは,衆議院の議決で決まるということが,国会法で定められています。
国会法による衆議院の優越ですね。
国会法第13条
前二条の場合において、両議院の議決が一致しないとき、又は参議院が議決しないときは、衆議院の議決したところによる。そして,さっきも挙げましたが,臨時会の会期の延長について,
国会法第12条第2項
会期の延長は、常会にあつては一回、特別会及び臨時会にあつては二回を超えてはならない。と,臨時会では,会期の延長は2回まで行うことができます。
最後に,臨時会は,内閣が召集決定したときだけでなく,衆議院議員の任期満了による総選挙後と,参議院議員の通常選挙が行われた後も,原則行われます。
国会法第2条の3第1項本文
衆議院議員の任期満了による総選挙が行われたときは、その任期が始まる日から三十日以内に臨時会を召集しなければならない。国会法第2条の3第2項本文
参議院議員の通常選挙が行われたときは、その任期が始まる日から三十日以内に臨時会を召集しなければならない。この,選挙後に行われる臨時会は,そのタイミングが常会や特別会と重なるときなどでは,その会議で事を済ますことができますので,臨時会を開きません。
国会法第2条の3第1項但書
(※衆議院の場合)但し、その期間内に常会が召集された場合又はその期間が参議院議員の通常選挙を行うべき期間にかかる場合は、この限りでない。国会法第2条の3第2項但書
(※参議院の場合)但し、その期間内に常会若しくは特別会が召集された場合又はその期間が衆議院議員の任期満了による総選挙を行うべき期間にかかる場合は、この限りでない。③特別会(特別国会)
特別会とは,特別国会とも呼ばれ,衆議院議員の解散総選挙後に召集される国会のことを言います。
衆議院が解散された後,であることに注目しておいてくださいね。
衆議院議員が,任期満了後に行われた総選挙の後の場合は,特別会ではなく,臨時会が召集されますので。
「解散」後か,「任期満了」後か,ここがポイントですからね。
第54条
衆議院が解散されたときは、解散の日から四十日以内に、衆議院議員の総選挙を行ひ、その選挙の日から三十日以内に、国会を召集しなければならない。憲法のこの規定の国会が,特別会です。
そして,会期(期間)は両議院の議決で決まり(国会法第11条),会期の延長は2回まで行うことができ(国会法第12条第2項)ることは,さっき臨時会で見たとおりです。
最後に,特別会を行うタイミングが常会と重なるときは,一緒に行うことができることが,国会法で定められています。
国会法第2条の2
特別会は、常会と併せてこれを召集することができる。(2)参議院の緊急集会
衆議院が解散されてから,総選挙が行われ特別会が召集するまでのあいだに,国会を開会しなければならない緊急の事態が起こったときは,国会に代行して,参議院で緊急集会を開くことができます。
次の憲法の条文を見てください。
第54条第2項
衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。但し、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる。
このように,衆議院が解散されて衆議院議員が不在のときに,参議院の緊急集会を求めることができます。
憲法の条文上,「衆議院が解散」のときとされていますので,衆議院議員の任期満了のときは,緊急集会は開くことは難しいと考えられています。
そして,この緊急集会を求めることができるのは,内閣のみで,参議院が自ら緊急集会を行うことはできません。
さらに,
第54条第3項
前項但書の緊急集会において採られた措置は、臨時のものであつて、次の国会開会の後十日以内に、衆議院の同意がない場合には、その効力を失ふ。と定められているように,緊急集会で採られた措置は,次の国会が開会されてから10日以内に,衆議院の同意が必要で,この同意がないと,緊急集会の措置は効力を失います。
ちなみに,この参議院の緊急集会を,国会の種類に入れていないのは,国会とは,衆参両議院での活動のことをいいますので,参議院のみの活動である緊急集会を入れなかったんです。
(3)定足数
次に,定足数についてです。
定足数とは,合議体が活動するために必要な最低限の出席者の数のことをいいます。
例えば,2013年9月3日現在,衆議院議員は480名います。
ある日の会議の出席者が10名だとして,その10名で国の重要事項を議決し,確定させてしまうのは問題ですよね。残り470人の意見が無視されるわけですから。
このように,少人数で事を決することのないように,憲法では定足数を定めているのです。
次の条文を見てください。
第56条第1項
両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。このように,総議員の3分の1以上の出席がないと,議事を開き議決することができません。
例えば,衆議院議員が480名いるとすると,そのうちの3分の1以上なので,160名以上の出席がないと会議ができない,ということです。
これは,諸外国に比べたら,比較的緩やかな基準なのだそうです。
(4)表決数
次に,表決数についてです。
これは,憲法で特別の定めがある場合以外は,すべて出席議員の過半数で議決を行います。
もし,可否同数,つまり,例えばある法案について賛成と反対が同じ数だった場合は,議長が決めます。
例えば,衆議院議員480名のうち,400名が出席したとします。その場合は,400名の過半数である201名以上の多数で可決される,ということです。
では,次の条文を確認しておきましょう。
第56条第2項
両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。(5)会議の公開
そして,両議院の会議は,公開が原則です。
しかし,それぞれの議院で,出席議員の3分の2以上の多数決で,非公開にすることができます。
これを,秘密会といいます。
第57条第1項
両議院の会議は、公開とする。但し、出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは、秘密会を開くことができる。(6)会議の記録
最後に,両議院は会議の記録を保存し,原則公開しなければなりません。
ただし,秘密会の中でも特に秘密を要すると考えられるものは,会議の記録を保存するだけで,公開しなくても良いです。
第57条第2項
両議院は、各々その会議の記録を保存し、秘密会の記録の中で特に秘密を要すると認められるもの以外は、これを公表し、且つ一般に頒布しなければならない。
【図表5:会議の記録】
そして,出席議員の5分の1以上の要求があれば,各議員の表決を会議録に記載しなければなりません。
第57条第3項
出席議員の五分の一以上の要求があれば、各議員の表決は、これを会議録に記載しなければならない。5.国会議員
それでは次に,その議院に所属する議員について見ていきましょう。
(1)任期
まず,任期ですが,次の45条を見てください。
第45条
衆議院議員の任期は、四年とする。但し、衆議院解散の場合には、その期間満了前に終了する。
衆議院議員は任期4年で,解散制度があります。
つまり,当選すると,衆議院議員として4年働くことになるのですが,途中で衆議院が解散されると,4年経っていなくてもそこで任期が終了します。
では次に,46条を見てください。
第46条
参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
参議院議員は任期6年で,解散制度がありません。
そして,「3年ごとに議員の半数を改選する」の意味ですが,文字だけでは説明しにくいので,次の図表5を見てください。
【図表6:半数改選について】
次に学ぶように,参議院議員は242人いるのですが,それを半分の121人ずつ2グループに分けまして,その2つのグループを3年ずらして,3年ごとに選挙して選ぶということです。
(2)議員定数
次に,それぞれの議院の議員定数ですが,43条2項では,それぞれの議院の議員定数は,法律で定めるとされています。
第43条第2項
両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。この定めを受けて,公職選挙法で,それぞれの議院の議員定数が定められています。
公職選挙法第4条第1項
衆議院議員の定数は、四百七十五人とし、そのうち、二百九十五人を小選挙区選出議員、百八十人を比例代表選出議員とする。2013年10月26日現在,衆議院議員の定数は,475人で,そのうち,295人は小選挙区で選ばれ,残りの180人を比例代表で選ばれます。
公職選挙法第4条第2項
参議院議員の定数は二百四十二人とし、そのうち、九十六人を比例代表選出議員、百四十六人を選挙区選出議員とする。2013年10月26日現在,参議院議員の定数は,242人で,そのうち,96人が比例代表で選ばれ,残り146人が選挙区で選ばれます。
ちなみに,選挙制度は,行政書士試験ならば,一般知識の政治で学びますね。
試験に頻出するテーマですので,忘れてしまったら,早めに確認をしておきましょう。
6.国会議員の特権
それでは次に,憲法では国会議員の特権が保障されていますので,それを見ていきましょう。
(1)不逮捕特権
まずは,不逮捕特権と呼ばれるものを見てみましょう。
では,次の条文を見てください。
第50条
両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。
このように,国会議員は,国会の会期中は逮捕されません。
そして,会期前に逮捕された議員は,その所属する議院の要求があれば,会期中は釈放しなければなりません。
ただし,例外として,法律の定める場合は,逮捕されます。
その「法律を定める場合」とは,国会法33条で定められています。参考に確認しておきますね。
国会法第33条
各議院の議員は、院外における現行犯罪の場合を除いては、会期中その院の許諾がなければ逮捕されない。
つまり,
①院外での現行犯逮捕の場合
②所属する議院の許諾がある場合
この2つの場合は,不逮捕特権の例外として,国会の会期中でも逮捕されるということです。
ちなみに,院外とは,「議院の外」という意味で,「議院の会議場の外」というイメージを持っておけば良いでしょう。
【図表7:国会議員の不逮捕特権】
さて,この不逮捕特権ですが,なぜこのような保障をしたかといいますと,
①議員の身体の自由を保障し,政府の権力によって議員の職務の執行が妨げられないようにすること。
②議院の審議権を確保すること
の2つがあると考えられています。
(2)免責特権
次は,議員の免責特権についてです。次の憲法の条文を見てください。
第51条
両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。
このように,国会議員は,その議院で行った発言や表決について,院外で責任を問われません。
これを免責特権と呼んでいます。
ここでいう「責任」とは,民事責任や刑事責任のことで,議院での発言のため,損害賠償請求されたり(民事責任),懲役刑に処せられたり(刑事責任)しない,ということです。
【図表8:国会議員の免責特権】
なぜこのような定めが置かれているかと言いますと,議員の発言が制約されてしまうと,議会に国民の意見を反映されなくなる恐れがあるからです。
(3)歳費受領権
最後に,歳費受領権です。これは,国会議員としての地位・職責にふさわしい生活を営むのに必要な歳費を受けることができる権利が,憲法で保障されているものです。
では次の条文を見てください。
第49条
両議院の議員は、法律の定めるところにより、国庫から相当額の歳費を受ける。
なお,この歳費受領権は「法律の定めるところにより」その額が決まります。この法律とは国会法のことで,国会法35条に定めがあります。
ですので,後に見る裁判官の報酬(79条6項)と異なり,法律の改正によって在任中に減額されることもあり得るということです。
試験でよく問われる点ですので,注意しておいてくださいね。
7.兼任の禁止
最後に,兼任の禁止について見ておきます。次の条文を見てください。
第48条
何人も、同時に両議院の議員たることはできない。これは,衆議院議員と参議院議員とは兼任することはできないという定めで,衆議院議員でありながら,参議院議員でもある,ということは認めないということです。
(終わり)
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