クマべえの生涯学習大学校

民法の全体像「血族・姻族」

ここは、民法の全体像「血族・姻族」を講義している教室です。

今回は、民法での親族の範囲を理解する上で必要となる血族と姻族についてです。


1.血族

まず、血族[けつぞく]には2つありまして、自然血族法定血族とがあります。

自然血族とは、血のつながりのある親族のことをいいまして、例えば、あなたとあなたの実の父や実の母、実の祖父母、兄弟姉妹などがこれにあたります。

そして、法定血族とは、養子縁組をした養子(自分)と、養親や養親の血族との関係のことをいいます。

養子縁組と言いますのは、本来は親子じゃないんだけど、親子になる契約を結ぶ、というようなイメージですね。

例えば、AさんとBさんは親子じゃないんですが、Aさんが親(養親[ようしん]といいます)でBさんが子(養子といいます)になるという約束をしたとします。この約束を養子縁組と言います。そして、市役所のような役所に届け出ると、AさんとBさんは法律上親子として扱われるんですね。

養子縁組が有効に成立するためには、その他にも細かい要件があるんですが、それはまた学習が進んでから学ばれるとよいでしょう。

【図表1:養子縁組】

養子縁組

そして、養子縁組をすると、AさんとBさんが血族になり(親子ですからね)、さらには、養子のBさんと、養親のAさんの血族とも血族関係が出来上がるんです。

例えば、Aさんにはお父さんPと、妹Qがいるとすると、BさんとPさんや、BさんとQさんも血族になるんですね。これを法定血族と言います。

【図表2:法定血族】

法定血族

ただし、養親のAさんと、養子のBさんの血族とは血族関係は出来上がりません。

例えば、Bさんには実のお父さんXと、お姉さんYがいるとします。でも、AさんとXさんや、AさんとYさんとは血族にならないんですね。この点、注意して理解しておきましょう。

【図表3:法定血族にならない場合】

法定血族にならない場合

このように、法定血族の場合は、血のつながりがあるなしに関係なく、養子縁組をすると血族になるというものなんですね。逆に言うと、養子縁組をしないと、法定血族にはならないということです。


さて、このように血族には自然血族と法定血族とがあるのですが、この血族を、別の角度から分類することがあります。

まずは、直系傍系[ぼうけい]から見てみましょう。

血のつながりのある家計図を書くとき、世代順に縦に並べ、兄弟姉妹を横に出して書くとします。

このとき、自分の上下に、縦にならんだ血族直系といい、横に出た兄弟姉妹の関係傍系と言うんですね。

下の図表4で、赤文字で書いているのが直系、青文字で書いているのが傍系ですね。


次に、尊属[そんぞく]卑属[ひぞく]についてです。

これは、自分を基準に、世代が上の人を尊属の人を卑属と言います。

少しややこしく感じるかもしれませんが、下の図表4でよく理解しておいてくださいね。

【図表4:血族】

血族

2.姻族

では、次に姻族[いんぞく]についてですが、姻族とは、婚姻によって親族となる関係のことをいいます。

例えば、AさんはBさんと交際していたとします。このとき、Aさんと、Bさんのお父さんCとは親族ではありませんね。まだ結婚していませんから、あくまでも他人です。

その後、AさんとBさんはめでたく婚姻したとします。すると、Aさんと、Bさんのお父さんは親族になります。

この、Aさんと、Bさんのお父さんCとの関係のように、婚姻するまでは他人なんだけど、婚姻をすることにより親族となる関係(婚姻の相手(配偶者)を除きます)を、姻族というのです。

もう少し一般的な言い方にすると、姻族とは、本人と、配偶者の血族との関係のことをいうのです。

自分と、婚姻をした相手方(配偶者)の家族・親戚が、姻族なんですね。

【図表5:姻族】

姻族

この姻族で、注意しておきたい点があります。次の図表6を見てください。

【図表6:姻族】

姻族

赤文字で書かれた、自分の兄弟姉妹の配偶者に注目です。

この赤文字で書かれた人を基準に見ると、自分は、赤文字で書かれた人の配偶者の血族に当たりますよね。

だから、赤文字で書かれた人と自分は、姻族関係になります。

例えば、Aさんには兄Dがいて、兄Dには妻Eがいるとします。このとき、兄の妻Eから見ると、Aさんは、兄Dと妻Eが婚姻するまでは他人だけど、婚姻することによって親族になりますね。

つまり、兄の妻Eから見て、Aさんは姻族であるということです。

これをAさんから見ると、兄の妻Eは、Aと姻族である、ということです。

【図表7】

この考え方でいくと、例えば、自分(A)の子(F)の妻Gと、自分(A)とは姻族ですね。

【図表8】

ちなみに、兄(D)の妻(E)のお父さんHと、自分(A)とは姻族ではないですよ。

【図表9】

このように、姻族というと、自分を基準にして、自分の配偶者の血族だけをイメージしてしまいますが、自分の血族の配偶者から見て、自分がその人の姻族に当たる場合もありますので注意しておきましょう。

このあたりは、とってもややこしいでしょ?文章と、図表を見比べながら、よ~く読み込んで理解してくださいね。


(終わり)

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