民法の全体像「担保物権」
ここは、民法の全体像「担保物権」を講義している教室です。
今回は、担保物権について,抵当権を例に挙げてお話しますね。
例えば,CさんはDさんに1000万円を貸しました。
このような,お金の貸し借りの契約を消費貸借契約といいます。
そして,CさんがDさんと契約を結んだということは,債権が発生するということですね。
その発生する債権のうち一番重要なものは,Cさんの「貸したお金1000万円を返せ!」という債権ですね。
【図表1:消費貸借契約】
でも,このCさんの債権って,人に要求することができるだけの権利なので,「1000万円返せ!」と言うことはできますが,それ以上のことはできません。
なので,Dさんが素直に返してくれたら問題は起こりませんが,もし返さないと問題です。
もちろん,Cさんは裁判を起こして,Dさんの財産を差し押さえて,そこから強制的に1000万円を回収するという方法はありますが,手続きが大変なのと,もしDさんにめぼしい財産が無ければ,Cさんはたとえ裁判に勝っても,1000万円を回収できません。
こんなことだと,Cさんはうかつに1000万円を貸せませんよね。
すると,Cさんが持っている1000万円が有効に利用できないですし,Dさんはお金を借りて事業資金にあてるとかすることができないですし,こうなると日本全体でも経済が滞り,不景気になってしまいます。
そこで,Cさんは,Dさんにお金を貸すときに,Dさんの財産に抵当権という権利を設定しておくと良いんです。
この抵当権は,例えばDさんの持っている土地の「経済的価値」だけを掴んでおき,「利用する価値」は持ち主に留めておく権利のことです。
ここで,経済的価値の意味ですが,その土地を売るとお金に変わりますよね。この「売るとお金に変わる」ということを、その物の経済的価値と呼んでいます。
【図表2:抵当権とは】
そして,もしDさんが1000万円を返せなくなったら,Cさんは裁判所に申し立てて(①),この土地を競売にかけてもらいます(②)。
そして,その売上げ代金(③)からCさんがDさんに貸した1000万円を優先的に受け取ることができるんです(④)。これを抵当権の実行といいます。
【図表3:抵当権の実行】
このように,抵当権を設定しておくと,安心してお金を貸すことができますよね。
つまり,この抵当権は,Cさんの債権を補強しているということです。
この抵当権のように,債権を補強する役目のことを「担保」といいます。
【図表4:担保とは】
そして,この担保の役目を果たす物権を「担保物権」と呼ぶのです。
その担保物権の代表格が抵当権です。
民法では,担保物権について,抵当権の他,留置権,先取特権,質権の4つを定めています。
その1つずつは後々に学ぶとして,まずは抵当権でイメージを理解しておきましょう。
(終わり)
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