民法の全体像「用益物権」
ここは、民法の全体像「用益物権」を講義している教室です。
今回からは,3回に渡りまして,いろいろな物権を見てみたいと思います。
物権というと,所有権がその代表格ですが,民法で定められている物権は所有権だけでなく,いろいろな物権が定められています。
それらのうち,今回は地上権を中心に、他人の物を利用するパターンの物権についてお話しますね。
例えば,Aさんは土地を持っているのですが,特に使うアテがありません。
そこに,土地を借りてマイホームを建てたいと思っているBさんが現れたので,AさんはBさんに土地を貸すことにしました。
Aさんが自分の土地をBさんに貸す方法としては,大きく2つありまして,
1つは賃貸借契約を結ぶ方法で,
もう1つが地上権設定契約を結んで,地上権という権利をBさんに設定してあげる方法です。
賃貸借契約は,債権法で学ぶものなので,今日は説明を割愛しまして,この地上権についてもう少しみていきますね。
では,次の図表1を見てください。
【図表1:地上権】
この図のように,Aさんは,自分の土地をBさんに貸しています。このとき,Bさんに,地上権という他人の土地を借りる権利を設定してあげるんです。
そうすると,BさんはAさんの土地を借りることができ,その土地にマイホームを建てることができます。
このとき,Bさんが地上権という他人の土地を借りる権利を持っていますので,Bさんを地上権者と呼び、地上権を設定してあげたAさんを地上権設定者と呼びます。
ただし,AさんはBさんに土地を貸しているだけなので,その土地の所有者はAさんのままです。
では,民法の条文を確認してみましょう。
第265条
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。地上権者を「Bさん」,他人の土地を「Aさんの土地」,工作物を「マイホーム」と置き換えて読むと,理解しやすいと思います。
以上が地上権についてです。
この地上権も,物権の1つとして定められています。
所有権と比べて,権利の雰囲気が違うでしょう?
所有権は,自分の物を利用したり処分したりする権利だけど,地上権は,他人の物を利用する権利ですから。
この地上権のように,他人の物を利用する権利を,用益物権と言います。
民法では,この用益物権として,地上権の他,永小作権,地役権,入会権の4つを定めています。
その1つずつは後々に学ぶとして,まずは地上権で他人の物を借りているイメージを理解しておきましょう。
(終わり)
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