民法の全体像「不動産と動産」
ここは、民法の全体像「不動産と動産」を講義している教室です。
今回は、不動産と動産についてお話しますね。
前回,所有権を見るついでに,「物」について簡単に触れましたが,不動産と動産は,この「物」の分類の1つです。
まず,不動産と聞いて,何をイメージされますか?
「土地!」
その通りですね。他には?
「家!」
そうですね。家などの建物も不動産です。
不動産と言えば,土地と建物をイメージできれば十分ですね。
ちなみに、実は不動産って、他にもあるんですが何か知ってます?
・・・・・・・・
ん~,そうですね,例えば,立木法という法律があるんですが,その法律に定められた方法で登録をすれば(これを登記といいます),その登録を受けた立木は,不動産として扱われます。
こんなのもあるんですね。
では,民法では,不動産についてどう定めているかを見てみましょう。
第86条第1項
土地及びその定着物は、不動産とする。定着物とは,土地にくっついて容易に離れなくなった物のことなので,土地と,その土地にくっついた物,例えば木や石垣などは,まとめて1つの不動産と考えるんです。
ただし,木は,さっき言いましたように,立木法で定める登記をすると,土地とは別の不動産になります。
そして,民法の条文には無いのですが,建物は,土地の定着物ですが,土地とは別の不動産として扱われています。
【図表1:不動産】
これが不動産です。
そして,この不動産以外の物を,動産といいます。
第86条第2項
不動産以外の物は、すべて動産とする。例えば,六法とか,デジカメとかが動産の例ですね。
ちなみに,次の条文を見てください。
第86条第3項
無記名債権は、動産とみなす。何やら,「無記名債権」という物は,動産として扱うらしい,ということは分かりますが,そもそも「無記名債権」とは何だ?と思いますよね。
この無記名債権とは,映画の入場券とか,電車に乗るときに買う切符なんかのことをいいます。
例えば,切符を持っていると,「切符を持っているんだから,電車に乗せてくれ」と駅員さんに要求できますよね。
ということは,この切符は債権を表していることになりますね。
そして,この切符には,持ち主の名前が記入されていませんね。これを無記名といいます。
だから,切符は,無記名債権の1つだと言えるんです。
このような無記名債権も,本来は物じゃなくて債権なので動産ではないんだけど,ほとんど「物」と変わりがないので,動産として扱おうと決められているんです。
(終わり)
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