民法の全体像「特殊型契約」
ここは、民法の全体像「特殊型契約」を講義している教室です。
今回は,今までに見た契約類型には当てはまらない、特殊なタイプの契約についてお話しますね。
1.組合契約
組合契約とは、人びとが集まって、共同して事業を営む団体をつくる契約のことを言います。
次の民法の条文を見てください。
【667条】
組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。ここで「出資」という言葉が出てきますが、これは「お金を出し合うことなんだな」と考えておいてください。
【図表1:組合契約】
この組合契約は、後に法人とか会社とかとのからみで出てきますので、今は大まかに理解しておけば良いでしょう。
2.和解契約
和解契約とは、争っている当事者どうしが、お互い譲り合って争いをやめる合意をすることを言います。
例えば、AさんはBさんに100万円を貸していたので、「100万円を返せ!」と主張しています。
しかし、Bさんは「私はあなたに自動車をあげたでしょ。これで借金を帳消しにしてくれるって言ってたでしょ。だから100万円を返すつもりはありません」と主張しています。
Aさんは、そんなことを言った憶えはないと言い張るし、Bさんは、いや確かに言ったと言い張ります。
このような2人が、お互い譲り合って、
「じゃあBからAに30万円を渡すことで、争いをやめましょう」と合意をしたとします。
この合意が、和解契約です。
【図表2:和解契約】
民法の条文では、次のように定められています。
695条
和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。世間一般用語としても、「争っていたAとBが和解した」なんて言いますよね。
厳密には異なる点もありますが、おおよそのイメージとしては同じと思っていて良いですね。
3.終身定期金契約
終身定期金契約とは、当事者の一方が、もう一方や第三者に、当事者のどちらかや第三者が死亡するまで、定期的に金銭などを支給する契約のことを言います。
って、できるだけ対象範囲を広げた言い方をしようとすると、こんな抽象的な言い回しになってしまいますが、例えば、Aさんは自分の持っている不動産をBさんに譲って、その代わりにBさんから月20万円のお金を、Aが死ぬまで支給してもらう、というような契約を、終身定期金契約といいます。
まあ、今でいうところの、保険会社と結ぶ年金保険の契約みたいなもんですね。
現在では、まず使われていない契約です。
【図表3:終身定期金契約】
民法の条文は、次の通りです。
689条
終身定期金契約は、当事者の一方が、自己、相手方又は第三者の死亡に至るまで、定期に金銭その他の物を相手方又は第三者に給付することを約することによって、その効力を生ずる。(終わり)
→次の民法の全体像「債権法の構成」に進む
←前の民法の全体像「労務型契約」に戻る
☆入門講義「民法」の目次に戻る
☆入門講義の目次に戻る