民法の全体像「契約の類型」
ここは、民法の全体像「契約の類型」を講義している教室です。
今回は,民法で定められているいろいろな契約について,その全体像をお話しますね。
民法では,契約の類型として,13種類の契約を定められています。その1つ1つについては次回以降でお話しますので,今回は,その内容が分からなくても結構ですので,その全体像を大きくつかんでみてください。
まず,財産権が他人に移動する契約として,贈与契約,売買契約,交換契約の3つが定められています。
そして,物を貸し借りして,他人の物を利用する契約として,消費貸借契約,使用貸借契約,賃貸借契約の3つが定められています。
そして,労務の提供といいまして,他人のために働く契約として,雇用契約,請負契約,委任契約,寄託契約の4つが定められています。
最後に,その他の特殊な契約として,組合契約,終身定期金契約,和解契約の3つが定められています。
【図表1:契約類型】
これらの民法で定められている13種類の契約は,典型的な契約というということで,典型契約と呼ばれたり,民法で名前がつけられている契約ということで,有名契約と呼ばれたりしています。
ところで,契約の種類としては,これだけかというとそうではありません。民法で定められている契約が13種類あるというだけで,契約は,契約を結ぶ当事者が自由にその内容を決めることができるんです。これを,契約(締結)自由の原則といいます。ですので,民法で定められていないような契約を結ぶことも可能です。
例えば,Aさんの家の隣には,Bさんの工場があるとします。Aさんは,午後9時を過ぎると就寝するので,Bさんに
「月1万円払うから,午後9時以降は工場を稼動しないで欲しい。」
と申し入れ,Bさんがそれを承諾しました。
このときにAとBで結ばれた約束も契約ですが,このような契約の種類は,民法では定められていません。しかし,契約自由の原則ですから,このような契約も有効なんです。
このような,民法で定められていない契約を,非典型契約とか,民法で名前がつけられていない契約ということで,無名契約というように呼ばれています。
【図表2:非典型契約】
(終わり)
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