行政法「行政手続法(3)『届出,意見公募手続き』」
ここは、行政法「行政手続法(3)『届出,意見公募手続き』」を講義している教室です。
1.届出
行政手続法の条文の順番でいうと,次は行政指導なのですが,以前行政作用法として説明しましたので,届出について説明しますね。
まず,届出とは何かと言いますと,一定の事柄を行政に知らせることを届出といいます。
例えば,行政書士の仕事の1つに,建設業許可申請があるんですが,この建設業者は,毎年行政に決算変更届を提出しなければなりません。
この決算変更届のようなものが,届出にあたります。
この届出ですが,普通,書面を提出することで行います。
そうすると,申請との違いがよく分からなくなりますが,申請は,行政庁に何らかの行為(許認可して欲しい!とか)を求めるものです。
これに対して届出は,行政に「知らせる」だけで,「何らかの行為を求める」ものではありません。
ここが,届出と申請との違いですので,次の図表1でイメージを確認しておいてください。
【図表1:届出と申請】
それでは,届出について,行政手続法では,何が定められているかを見てみましょう。
届出については1カ条だけ定めが置かれています。
次の第37条を見てください。
第37条
届出が届出書の記載事項に不備がないこと、届出書に必要な書類が添付されていることその他の法令に定められた届出の形式上の要件に適合している場合は、当該届出が法令により当該届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに、当該届出をすべき手続上の義務が履行されたものとする。
これは,一般の人が行政に届出をしているのに,行政が受け取らず,後になって
「ちゃんと届出をしていないじゃないか!けしからん!そんな奴は営業許可を取り消す!」
なんてことにならないようにするため,届出書に不備がないなら,届出の提出先とされている機関の事務所に到達したときに,届出を完了したこととする,ということを定めています。
こうしておけば,許認可を取り消す手段として,届出を受け取らないということが起こりませんよね。
2.意見公募手続等
次に,意見公募手続等について説明しますね。
例えば,Aさん家のルールにこんなのがあったとします。
「おかあちゃんに反抗したら晩ごはん抜き!」
「おとうちゃんの1か月のお小遣いは3千円!」
ん~なかなか厳しいお家で(笑)
こんなルールでも,みんな納得していれば良いんですが,このルールを定めるとき,権力者(?!)のおかあちゃんが,
「私こんなルール作ってん!今日から守ってや!」
と一方的に作られたものだったらどうでしょう?
「いや,それはちょっときびしいような・・・」
と言いたくなると思います。
でも,おかあちゃんに
「何?!なんか文句でもあんの?!」
と睨まれたら,何にも言えなくなったりして。。。
さて,以前,行政立法を勉強しましたように,行政も様々なルールを作るのですが,そのとき,一方的につくるのではなく,世間一般の人々の意見を聴いて作ってほしいですよね。
ルールを作った行政に
「はあ?!何か文句ある?!」
と睨まれるのはゴメンです。。。
そこで,行政手続法では,行政がルールを作るときの手続きについて定めを置きました。
もともと,パブリック・コメントと言われるものはありましたが,それを一般的に法定したものと言えるでしょう。
まず,第38条第1項で,根拠となる法令の趣旨に適合するようにしなければならないと定めています。
そして,第38条第2項では,行政がルールを作ったあとも,適正を確保する努力をするように定めています。
次の第38条を確認してみてください。
第38条
第1項命令等を定める機関(閣議の決定により命令等が定められる場合にあっては、当該命令等の立案をする各大臣。以下「命令等制定機関」という。)は、命令等を定めるに当たっては、当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければならない。
第2項
命令等制定機関は、命令等を定めた後においても、当該命令等の規定の実施状況、社会経済情勢の変化等を勘案し、必要に応じ、当該命令等の内容について検討を加え、その適正を確保するよう努めなければならない。
ここで,「命令」とは,行政が作るルールのことで,「命令等制定機関」とは,命令をつくった行政のことです。
そして,第39条で,行政がルールを作るときは,作る前にその案を公開して,広く一般の意見を求めなければならないものとしました。
では,第39条第1項を確認しましょう。
第39条第1項
命令等制定機関は、命令等を定めようとする場合には、当該命令等の案(略)及びこれに関連する資料をあらかじめ公示し、意見(略)の提出先及び意見の提出のための期間(略)を定めて広く一般の意見を求めなければならない。このあと,意見公募手続きについての細かい定めが続いていきますので,一度ご確認くださいね。
では,次の図表2で意見公募手続きのイメージを確認してみてください。
【図表2:意見公募手続き】
以上,行政手続法について,ざっとおおまかに見てきました。
公務員試験を受験される方は,このあと過去問にあたり,足りない知識を補充してくださいね。
行政書士試験を受験される方は,このあと,さらにしっかりと条文にあたりましょう。
問われるのは,ほとんど条文の知識ですが,やや細かい問題も出題されていますので。
(終わり)
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