行政法「行政立法,行政計画」
ここは、行政法「行政立法、行政計画」を講義している教室です。
今回は、行政立法と、行政計画について、お話をしていきます。
1.行政立法
まずは、行政立法からです。
行政立法とは、行政が作る、国のルールのことをいいます。
例えば、政令というルールは、内閣が作るもの、と憲法の時間で学びます。これも、内閣という行政が作ったものだから、行政立法の1つです。
ところで、本来、国のルールは、国会が作る法律でしか定めることはできません。
ルールを作る権限を立法権といいますが、立法権は、国会にあるからです。
以前、法律による行政の原理で、法律の専権的法規創造力として学びましたね。また、憲法でも学ぶところです。
さて、では、行政が自由に国のルールを作ることができるとすると、国会を無視することになり、これはちょっとマズいですよね。
そこで、法律が「○○のことについては、行政でルールを定めてもよい」というように行政にまかせて(まかせることを委任という)いるならば、行政は立法できる、と考えるのです。これだと、国会のコントロールが働いていますから、国会を無視することにはなりませんね。
例えば、法律で「パソコンを扱えるなら、クマべえ講義を受けることができる。詳しいことは政令で定める」というように、法律の中に、政令にまかせるような定めがあったとします。
そうすると、この法律を受けて、政令で「クマべえ講義を受けることができる時間は、とくに制限をもうけないことにする」というように、法律の内容を詳しく定めたりできます。
このような場合を、「法律の委任に基づき、行政は立法できる」というのです。
【図表1:行政立法のイメージ】
しかし、行政がルールを作る場合、何が何でも法律の委任が必要なわけではありません。法律の委任が必要でないものもあります。いわゆる行政規則と呼ばれているものですが、これについては後ほど説明しますね。
さて、このように、いろんな種類の行政立法があるのですが、それをまとめたものが、次の図表2です。
【図表2:行政立法の種類】
ではここからは、この図表について説明しますね。
(1)法規命令
行政立法は、図表2のように、法規命令と行政規則に分類されます。
これは、法規を含むかどうかで分類しています。
法規とは、国民の権利や義務に影響を与えるルールのことをいいます。
例えば、「医者の仕事をするときは、医師免許を取らなければならない」とするルールは法規にあたります。なぜなら、「医者の仕事をしたいならば、免許を取らなきゃダメ!」と、国民に義務づけているからです。
この法規を含む行政立法を法規命令といい、法規を含まないものを行政規則といいます。
言い換えると、国民の権利や義務に、影響を与える行政立法を法規命令といい、影響を与えないものを行政規則というのです。
それでは、この法規命令と行政規則について、もう少し詳しくみてみましょう。まずは法規命令からです。
さっきの図表2を見てください。
法規命令は、さらに委任命令と執行命令に分類されます。
このうち、委任命令とは、法律の委任により定められる、国民の権利義務に影響を与えるルール(法規)のことをいいます。次の図表3を見てください。
【図表3:委任命令のイメージ】
もう少し簡単に言うと、図表3のように、法律で「行政で、国民の権利や義務に影響を与えるルールを定めてもいいですよ」と、行政にまかされています。これを委任といいます。
そして、法律でまかされたとおりに、行政で定めたルールを委任命令というのです。
例えば、法律で「お父さんは、生活費をかせげ!具体的なことは、政令で定める」と、おおまかなことだけ法律で定めて、具体的な義務は、政令にまかされているとします(こんな法律はないですけど・・・)。
そして、その法律に基づいて、政令で「お父さんは、月30万円以上かせげ!」と、具体的な義務(別に権利でも良い)を定めたとします。
この例で出てきた政令のようなものを、委任命令と呼んでいます。
そして次に、執行命令とは、法律で定められた権利義務の細かい部分を、行政で定めたもののことをいいます。次の図表4を見てください。
【図表4:執行命令のイメージ】
もう少し説明をくわえると、図表4のように、法律で「国民の権利や義務についてはもう定めました。あとは行政で、細かい手続きなどを定めてください」と定められているとします。
そして、この法律で言われたとおりに、行政で細かいことを定めたルールを執行命令というのです。
例えば、法律で「お父さんは、月30万円かせげ!細かい手続きは、政令で定める」と、具体的な義務は、さきに法律で定めておいて、細かい手続きなどを政令にまかされているとします。
そして、その法律に基づいて、政令で「月30万円は、ボーナスを含めた年収を、月割りで計算する」と、月収の計算方法など、細かい手続きを定めたとします。
この例で出てきた政令のような行政立法を、執行命令と呼んでいます。
執行命令では、国民の具体的な権利や義務を、行政立法で定めていませんね。細かい手続きだけでした。ここが、さっきの委任命令との違いです。
そして、これら委任命令と執行命令を合わせて、法規命令と呼んでいるのです。
(2)行政規則
では、行政立法を大きく2つに分類した、もう1つの方、行政規則について説明しますね。
この行政規則は、法規を含まないものをいいます。
言い換えると、行政規則は、国民の権利義務に影響を与えません。次の図表5を見てください。
【図表5:行政規則のイメージ】
例えば、この図表5のように、役所の上司から、「住民票の交付の事務は、こうしろ」などと、部下の職員に命令をするようなものがあります。このような、行政内部での命令を、訓令や通達と呼びます。この訓令や通達は、行政規則の具体例です。
この訓令や通達という、上司の命令は、部下の事務処理に影響を与えますが、国民には影響を与えませんよね。もし、市役所の部長から、あなたに命令されたとすると、
「なんでお前に命令されなあかんねん!俺(私)、関係ないやん」
と、文句を言いたくなります(また大阪弁ですみません・・・)
このように、国民の権利義務に影響を与えない行政のルールを、行政規則というのです。
ちなみに、これまでに見た行政立法の種類は、その内容について分類したものですが、「誰が作ったのか?」で分類することもできます。
例えば、今回の講義の最初の方で出てきた政令は、内閣が作ったルールですし、内閣府の長である内閣総理大臣が作るルールは内閣府令といい、法務大臣が作るルールは法務省令、人事院が作るルールは人事院規則、はたまた都道府県のトップである知事が作るルールは規則、などなど、色々あります。
これらを全て覚える必要はありませんよ。色んな種類の行政立法があるんだなということが理解出来ればオッケーですので。
さて、これで行政立法のお話は終わりですが、理解はできましたか?たぶん、たくさんの人が、
「もう、頭がパンクしそう(><)」
と、苦しんでらっしゃるかも知れませんね。
でも、あきらめずに、じっくりと繰り返し読みながら、理解を進めてくださいね。あせる必要はありませんよ。
行政法特有の、ふだん使わない専門用語に、慣れてくると、意外と楽に感じられるところですから。
コツは、用語をしっかりと憶えて、慣れることです。
是非、頑張ってくださいね。
2.行政計画
行政作用法の2つ目として、行政計画についてお話ししましょう。
例えばあなたは、「行政書士の資格が欲しい!」と思ったとたん、いきなりガムシャラに勉強を開始されますか?
もちろん、中には猪突猛進型の方もいますので、そのように勉強を開始された方もいらっしゃるでしょう。
しかし、たいていの方は、行政書士試験について詳しく調べ、どれくらいの勉強量で合格ラインに到達できるかとか、仕事や家庭など自分の今置かれている環境などを考え、どういう勉強をしていくかを計画し・・・
と、勉強を始める前に、いろいろ考えて計画されると思います。
行政もそれと同じで、例えば「関西国際空港が欲しい!」と思ったとたん、いきなり公共工事を行う、というわけではありません。
そんな行き当たりばったりの行政運営をされたら、一瞬で財政破綻ですわ(^^ゞ
そういうわけで、行政が何か事業を行ったりするときには、まず目標を立てて、その目標を達成するための方法などを考えて計画を立て、それからその計画の実施に移ります。
この行政が立てる計画を、行政計画と呼んでいるのです。下の図を参考にしてイメージを作ってみてください。
【図表6:行政計画のイメージ】
この行政計画は、行政の活動について立てられます。
その行政の活動は、とっても幅広いんでしたね。行政は、いろいろな活動をしているのでした。
ということで、行政計画も、いろんなものがあるんですよ。
例えば、経済的な計画、人事にまつわる計画、都市の開発の計画、などなど。
ですので、その法律的な性質もさまざまありますから、行政計画の学習のポイントはこれだ!というお話しをするのが難しんですよ。
「じゃあ、何を勉強すればいいの?」
と思われますよね。
それは、ある程度行政法の勉強が進んだあと、判例をしっかりと勉強してみてください。
特に、行政計画と行政事件訴訟との関係は、非常に重要なテーマですよ。
と言っても、今はまだ気にしなくていいですからね(^^)
行政計画って、こんなもんかなぁ、というぐらいに、モヤッとしたイメージが頭の中にあれば充分ですよ。
(終わり)
→次の行政法「行政行為の全体像」に進む
←前の行政法「作用法の全体像」に戻る
☆入門講義の「行政法」の目次に戻る
☆入門講義の目次に戻る