行政書士試験の過去問学習法
ここは、行政書士試験の過去問学習法を講義している教室です。
過去問を学ぶ際に押さえておきたいポイントをお話していますので、過去問講義を見る前に、また過去問講義を勉強中に、逐一確認しながら、過去問学習を進めていただけたらと思います。
1.正解率は気にしない
まず、過去問をされている方を見ていて、一番気になる点が、過去問の正解率を気にしている方が意外と多くいらっしゃることです。
もちろん、正解率が気になるのはよ~く分かります。6割を超えていたら嬉しいですし、6割を下回っていたらヘコみます。人間ですもん。それが自然ってものですよね。
だから、正解率を気にするなとは言いません。気になる方は、大いに気にしていただいてオッケーです。
私が気になっているのは、正解率を優先順位1番にしてしまって、本当に大切なことに目を向けるのを忘れてしまうことなんですね。
過去に出題された問題が、自分が受験する時に、まるまる同じ問題が出るのなら、正解率を優先順位1番にした方が良いでしょうけど、そんな、まるまる同じ問題が出るわけがありませんよね。
ましてや、出題されている分野が同じというだけで、形式も内容も異なっていて、類題とすら言えない問題みたいなのが出ているくらいですから、正解率を優先順位1番にしても、あまり意味はありませんね。
では、何を優先順位1番に考えたら良いかと言いますと、それは「試験委員がこのテストでどのような力を求めているのか?」を過去問から読み取ることです。
まあ、そう言われて「ああそうか!」とはなりませんよね。ですので、その辺をお話しますね。
2.試験委員はどんな方?
行政書士試験の試験委員は、どんな方か知っていますか?もちろん「ああ、清潔感のある良い人ですよ」なんていう意味ではなくて。
それは、大学の先生ですよね。鈴木先生は高校の先生ですが。
つまり、そこには、行政書士を現実に開業している実務家は入っていないということです。
「なんだ、当たり前じゃないか」
そう思われるかも知れませんが、そうでもないんですよね。例えば、司法試験なら、大学の先生だけでなく、弁護士や法務省職員、裁判所判事などの実務家も試験委員に入っています。
また、司法書士なら、法務省の職員と司法書士の実務家が試験委員ですし、公認会計士でも、大学の先生だけでなく、公認会計士の実務家が試験委員に入っています。
このように、世に「難しい」と言われている国家試験では、実務家が入っているのが普通と言ってよいと思います。
でも、行政書士試験は、合格率が10%を切ることの多い、難しい国家試験なのですが、試験委員には実務家は入っていないんですね。
そこから分かることは、試験を受ける段階では、実務に必要な知識を問うものではなく基礎的素養と問うことにし、試験合格後に、その基礎的素養を土台にして、実務に必要な知識を身につけていって欲しいのだろうと推測できますね。
そう言われても「はい、そうですか」とはなりにくいかも知れませんが、将来行政書士として仕事をするに当たって「これくらいのことは勉強してから開業してほしい」ということを試験に出してくる、ということです。
では、法令科目で、基礎的素養とは何か。それは条文と判例ですよね。行政法だけは少しおもむきが異なって、基礎理論と判例になりますね。
だから、過去問を学ぶときには、「条文を学ぶとはどういうことか」「判例を学ぶとはどういうことか」という視点で、選択肢を1つずつ読み込んでいくことが大切なんです。
でも、そんなの1人ではなかなかできませんよね。だから、解説があるんです。私の解説でも良いですし、過去問集をお持ちならその解説でも良いですので、その解説をしっかりと読み込んでください。
その問題が正解できたかどうかよりも、解説を読んで学ぶべきことを学べたかどうかの方が、はるかに大切なんですよ。
あと、試験委員をされている大学の先生は、大学で大学生を教えていますよね。そこには、単位だけもらえたらそれでいいわ、てなもんで要領よく授業を受けている生徒もいるわけで。。。そんな中、大学の先生は、苦労して「大学卒として恥ずかしくない」素養を身に付けされようとされているわけで。。。
つまりね、大学の先生は、要領よく試験をこなそうとする人に困っているんです。もっと、感情的に代弁をすると、そういう人を嫌っていると言えるかも知れませんね。
ということは、行政書士試験においても、要領や試験テクニックを使って合格されるのを嫌うはずです。ちゃんと、学習の王道を通って、合格して欲しいと願っているはずです。
行政書士試験の問題を作るときにも、そういう考え方が表れているはずです。
例えば、「とりあえず過去問をまわしたら何とかなるだろう」という受験生は合格できないように、過去に出題された問題は出しませんし、同じ単元でも、形式を変えたり内容を変えたりしてくるんですね。
だから、要領よく、効率よく学習して合格しようとすると、かえって遠回りになりやすい試験なんですね。もちろん、試験ですから運も働きます。要領をかました人が運良く合格し、しっかりと学んだ人が運悪く不合格になることもあります。
しかし、だからといって、要領よく勉強することが短期合格の近道ということにはなりません。そんなの、非論理的ですね。
ですので、過去問を学ぶときは、「試験委員は行政書士試験に合格するために、どのような力を求めてきているのか?」ということを意識することが重要なんですね。
「この問題はこうすれば正解の肢を選べる!」みたいな解法テクニックを否定する気は毛頭ないのですが、そればかりに走らないように、気をつけてくださいね。
3.行政書士試験は絶対評価の試験
次に、行政書士試験は、絶対評価の試験だということです。
これは、例えば司法書士試験や社労士試験は、「受験者全員のうち、上位何%が合格する」という相対評価の試験と異なり、「6割以上の点数を取った人が合格する」という絶対評価で合否を決めているということです。
司法書士試験などのような相対評価の試験では、難しい問題の年度は合格ラインが下がりますし、簡単なら合格ラインが上がります。ですので、試験委員は「このレベルの問題は解けて欲しいよなあ」と思いながら作っても、あまり意味がないんですね。なぜなら、合格ラインに入る人の水準が高ければ、余裕で解くでしょうし、そうでなければ解けないでしょうし。受験者によるんですね。
それに対して、行政書士試験のような絶対評価の試験では、受験者の能力に左右されずに、試験委員でラインを作れるんです。「このレベルの問題で、6割の正解ができる人に合格して欲しい」と。
だから、過去問に対する取り組み方も、おのずと異なるんですね。
司法書士試験などの相対評価の試験では、他の受験者との競争ですから、他の受験者が過去問を何回もまわして、正解率を100%に近づけて受験する以上、自分も最低限過去問の正解率を100%に近づけておかなければなりません。逆に言うと、過去問をまわすことが、合格への最短距離とも言えます。この場合、過去問の正解率は、結構重要になりますね。
それに対して、行政書士試験では絶対評価ですから、試験委員が定めたハードルを越えることが必要になります。だから、過去問をする場合でも、正解率を上げるよりも、試験委員がどの辺をラインと決めているのかを読み取る必要があるんですね。さっきもお話しましたように、過去問をまわして効率よく合格する、という手は使えないということです。
このように、合格者を決める方式に特徴があるので、それに注目した過去問学習でないといけないんです。
そういうことを踏まえた上で、じっくりと過去問に取り組んでいただきたいと思います。
4.細かい点
あと、実際に過去問を学ぶ際の細かい点をお話しておきます。
(1)テキスト類
テキスト類は、今お手持ちのものを利用されると良いでしょう。資格試験学校に通われている方はそこで配布されるテキストでよいですし、市販のものを購入された方はそれを利用されれば良いです。
これから購入をお考えの方で、どれを選べば良いかですが、これは書店に行って、何冊か中をパラパラっと見て、読みやすそうなもので良いと思います。
また、単元別のものと、年度別のものがありますが、これも好みですね。私としては、年度別の方が研究しやすいので好きなので、このホームページでの解説も年度別にしています。
(2)こなす量
量としては、3年~5年分くらいで良いと思います。それより古いものですと、傾向が現在とやや異なりますので、勉強にはなりますが、研究にはなりにくいかなと思います。
まわす回数は、その方にもよりますが、だいたい3回くらいをめどにされたらと思います。もちろん、記憶力に秀でていらっしゃる方なら1、2回で問題を憶えてしまうでしょうからそれで終わりにしても良いですし、反対に記憶力に自信がない方なら、5回、10回とまわすのも有りだと思います。
ただ、さきほどもお話しましたように、過去問をまわせば合格ラインを超えることができるという試験ではありませんので、過去問をまわすのも、ほどほどが良いでしょう。
(3)当ホームページの利用
当ホームページでは、解説のみを載せ、問題は載せていません。問題を見たい方は行政書士試験研究センターのホームページ(リンクしています)にアップされていますので、そちらをご覧くださいね。
5.そして正解率
最後に、正解率の話に戻りまして、上でお話したようなことを意識した上で、冷静に正解率を分析していただきたいと思います。
そして、分析をするポイントですが、科目ごとのおおよその正解率は押さえておいた方が良いです。
例えば、司法試験や司法書士試験を受験される方が、行政書士試験も受験する場合、一般的には、民法や商法は点数が取れるけれど、行政法で苦労する方が多いんですが、それはあくまでも一般論で、中には行政法は得点できるけれど、実は民法が・・・という方も大勢いらっしゃいます。
また、行政書士試験1本で受験されている方は、一般的には行政法では点数が取れるけれど、民法や商法で苦労するというかたが多いです。しかし、これもあくまで一般論であって、あなたがそうとは限りません。民法・商法は意外とラクに点数が取れるようになったけど、行政法が・・・という方も大勢いらっしゃいますから。
だから、科目ごとのおおよその正解率を押さえた上で、今後の学習計画に活かしていくとよいでしょう。
一般知識も同じですよ。一般的には、情報・文章理解で点数を取って、政経社会はアテにしない、とされていますが、過去問をすると、なぜか自信のない政経社会では点数が取れて、情報や文章理解で苦戦する、という方も大勢いらっしゃいますので。
とにかく、自分の傾向をつかむためにも、科目ごとの正解率を押さえるようにしておきましょう。
(終わり)
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