憲法「憲法改正,最高法規」
ここは、憲法「憲法改正,最高法規」を講義している教室です。
今回は,憲法の最後に,憲法改正と最高法規についてお話しますね。
1.憲法改正
時代が進むにつれ,人々が「何を大切」と考えるかは,変化するものです。
例えば,18世紀頃では,個人の財産は絶対的に大切と考えられていましたが,現代では,財産権はより制限を受ける人権とされているのでしたね。
時代とともに,人々の価値観も変化するのですね。
後で見るように,憲法は日本国の最高法規とされていますから,むやみに改正されてしまうのも問題ですが,かと言って,全く改正できないことにすると,この時代の変化に対応できなくなってしまい,かえって憲法が形だけのものになってしまいます。
このような背景を踏まえて,日本国憲法は改正できるけれど,他の法律の改正よりも要件を厳しくして,むやみに改正できないようにしています。
このような憲法を,硬性憲法といいます。
反対に,他の法律と同じような手続きで,簡単に改正できる憲法を軟性憲法といいます。
日本国憲法は,硬性憲法に分類されます。
それでは,日本国憲法の改正手続きを見ていきましょう。
改正手続きを,おおまかにまとめると,次の3つの手順を追います。
①国会の発議
②国民の承認
③天皇の公布
この大きな流れを頭の片隅に置いて,次の条文を見てください。
第96条
第1項:この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。第2項:憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
①国会の発議
まず,国会が憲法改正の発議をします。
ここで「発議」の意味ですが,これは,国民に提案される憲法改正案を国会が決定することを言います。
そして,この発議の要件ですが,「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」が必要です。
例えば,本日2013年11月28日現在,衆議院議員480人,参議院議員242人いますので,憲法改正案について,
衆議院で,480人の3分の2以上,つまり320人以上の賛成があり,
かつ参議院で,242人の3分の2以上,つまり162人以上の賛成があると,発議ができます。
このとき,国会は「発議」を行うのであって,この議決で「憲法改正」ができるのではありませんので,ご注意ください。
②国民の承認
国会の発議が行われた後は,国民の承認が必要です。
この国民の承認は,特別の国民投票,つまり,憲法改正のための国民投票を実施するか,
または国会の定める選挙の際に,合わせて国民投票を実施するかで行います。
そして,この条文を受けて,日本国憲法の改正手続きに関する法律が2007年5月18日に公布され,2010年5月18日に施行されました。
通称として国民投票法と呼ばれていますね。
一般知識対策として,この法律の内容を少し見てみましょう。
まず,投票権者は,満18歳以上の日本国民とされています。
ただし,国会議員などの選挙の選挙権は満20歳以上とされていることから,法律の制度が整うまでは満20歳以上の日本国民とされています。
そして,国会の発議後,60日以降180日以内で,国会の議決で決めた日に国民投票を行います。
投票は,改正案ごとに1人1票投票します。
その方法は,投票用紙に「賛成」「反対」の文字が印刷されていて,どちらかに○をつける方法で行います。
そして,投票の結果は,賛成と反対を合わせた数を投票総数とし,その過半数の賛成があれば,憲法改正が成立します。
あと,最低投票率の制度は設けられませんでした。
③天皇の公布
そして,最後に,天皇は,「国民の名」で憲法改正を公布します。
「国民の名で」としているのは,改正権者である国民の意思で憲法を改正したことを宣言するためと考えられています。
では,憲法改正手続きを図表にまとめておきましたので,確認しておいてください。
【図表1:憲法改正】
2.最高法規
では最後に,最高法規について見ておきましょう。
ここでは,条文をしっかりと読み込んでおきましょう。
第97条
この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。
言い回しがやや古く感じるかも知れませんが,漢字に注目しながら読んでみると良いと思います。
では次の条文です。
第98条
第1項:この憲法は、国の最高法規であつて、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。第2項:日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
ここで,詔勅とは,天皇が発する文書類だと理解しておけばオッケーです。
第2項は,国際的なルールは誠実に守りましょうということなので,最高法規とは直接的な関連はないですね。ただ,学習が進んだら「最高法規である憲法と,国際法規の条約は,どっちが効力が上なの?」というテーマに取り組むことになりますので,そういう意味では最高法規との関連があります。
では,最後の条文です。
第99条
天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
日本の国を運営する立場にある人たちは,この憲法を尊重しなければならないことが定められています。
ここに,「国民」の文字が無いことに注目しておきましょう。
憲法は,他の法律とは異なり,国民が国家権力に対して「これを守れ!」と突きつけたルールです。
だから,99条に「国民」の文字が入っていないんです。
以上で憲法の入門講義は終わりです。
憲法の学習は,入門講座の最初にもお話しましたように,ともすれば抽象的になりがちですので,具体的なイメージが持てるように,人権分野では判例を,統治機構では国会法などの憲法以外の法律を見てきました。
試験対策として考えるなら,基本を学んだあとは,しっかりと判例にあたることが大切になります。
本屋さんなどで手に取ってみて,読みやすいもので良いですので,是非チャレンジしてみてくださいね。
(終わり)
←前の憲法「地方自治」に戻る
☆入門講義の「憲法」の目次に戻る
☆法律入門講義の目次に戻る