民法の全体像「対抗要件(2)」
ここは、民法の全体像「対抗要件(2)」を講義している教室です。
今回は,対抗要件の続きで、不動産の対抗要件についてお話しますね。
例えば,Aさんは,自分が持っている土地をBさんに売る契約をしました。
ところが,その土地をCさんにも売る契約をしました。
前回お話しました二重譲渡の場面ですね。
このとき,BさんはCさんに「この土地は私の物だ!」と言いたいですし,反対にCさんはBさんに「いやいや,この土地は私の物だ!」と言いたいですよね。
つまり,BとCは対抗関係になるわけです。
このとき,「この土地は私の物だ!」と主張するためには,どのような要件を備えればよいでしょうか。
デジカメなどの動産ならば「引渡し」でしたね。
でも,土地は不動産ですので「引渡し」が対抗要件とはされていません。
この不動産の対抗要件については,177条で定められています。次の条文を見てください。
177条
不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法(平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。言い回しがやや難しく感じますが,要は,「登記」が対抗要件とされているなあということが分かると思います。
ここで,「登記」について説明しておきますと,
土地や建物は,すべて法務局という役所に登録されているんですね。
「どこそこの土地は,地番が○○番で,どんな形で,面積はいくつで,所有者はだれだれで・・・」
なんてことが,法務局に備え付けられている登記簿という帳簿に記入されて登録されているんです(現在,ほとんどの法務局ではコンピュータにデータとして登録されています)。
この,法務局にある登記簿に登録することを,登記と呼んでいます。
【図表1:登記とは】
この不動産の登記について,もう少し詳しく知りたい方は,法務省のホームページに「不動産登記のABC」というページ(←リンクしています)がありますので,一度のぞいてみてください。
では,話を二重譲渡に戻しまして,
第三者に「この土地は私の物だ!」と主張(対抗)するためには,登記簿に記入されている所有者を自分の名前に変更しておく必要があります。
このように,自分の名前を所有者として登記しておくと,第三者に「この土地は私の物だ!」と言えるようになるんです。
例えば,Bが先に登記をすれば,BはCに「この土地は私の物だ!」と言うことができますが,反対にCはBに「この土地は私の物だ!」と言うことができなくなります。
もちろん,Cが先に登記をすれば,CはBに「この土地は私の物だ!」と言うことができ,反対にBはCに「この土地は私の物だ!」と言うことができなくなります。
【図表2:不動産の登記】
このように,不動産でBとCのような対抗問題が発生したら,登記の早い遅いで決めていくことが,民法で定められているんです。
この不動産と登記については,いろんな場面で出てきますので,今日お話したことをしっかりと理解しておいてくださいね。
(終わり)
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