行政法「プロローグ」
ここは、行政法「プロローグ」を講義している教室です。ここでは、行政法という法律科目の、全体的なお話をしていきます。
1.行政法ってナンだ?
行政法って、あまり聞き覚えのない名前の法律ですよね?
これからあなたが勉強していく行政法って、どんな法律なのでしょうか。
もし、お手元に六法があるなら(ネットで条文検索されてもいいですよ)、一度調べてみてください。
どうでした?行政法という名前の法律はありました?
「あれ?ないぞ?調べ方が悪いのかな?」
いえいえ、調べ方が悪いのではありません。と言いますのも、行政法という名前の法律は、この世に存在しないのです。ですので、行政法第1条や第2条・・・というものは無いのです。
こんなことを言うと、初めて行政法を勉強される人は、たいていビックリしてしまいます。私もビックリして戸惑いました。誰だって、「行政法」なんていう名前を聞けば、行政法という法律があり、その条文があると、思いますもんね。
でも行政法は、条文が集まってできている法律ではありません。たくさんの法律が集まってできているものなんです。
「ナンじゃそれ?なんかもう、訳が解らない(?_?)」
そうでしょうそうでしょう(笑)。みんなここで苦労するのです。でも大丈夫ですよ。すぐに慣れますからね(^^)。
さて、次の図表1を見てください。
【図表1:行政法のイメージ1】
ふつう、法律とは、この図の左側のように、条文がたくさん集まってできています。
しかし、行政法とは、この図の右側のように、行政についての法律の集まりを言うのです。
例えば、ある学校の3年1組は、安藤さん、伊藤さん、岡田さん、などなど、数十名が集まって、できていますよね。
その数十名をまとめて「3年1組、集合!」というふうに、呼ばれるわけです。
行政法も、これと同じです。
「国家行政組織法」とか「地方公務員法」というような、行政に関する法律が日本にはたくさんあるのですが、それらをまとめて「行政法」と呼ぶのです。
次の図表2で、3年1組の例と、行政法のイメージを、重ね合わせてみてください。
【図表2:行政法のイメージ2】
行政法の、おおよそのイメージはつかめましたか?つかめましたら、めでたし、めでたし!
「ちょ、ちょっとクマべえ先生!めでたくなんか、ないですよ。私は今から、行政にまつわるたくさんの法律を、勉強しなくちゃいけないんですから(;_;)」
おっ!あなた、いいところに気が付きましたね。初めて行政法を勉強される方が、2回目にビックリするところが、ここなんです。たいていの方が、
「憲法1つだけでも、大変だったのに、そんなにたくさんの行政に関する法律なんか、勉強してられないよ!」
と、ヤル気をなくしてしまいます。
でも、安心してください。憲法のように、条文の知識が必要な法律は、限られています。せいぜい、行政手続法、行政代執行法,国家賠償法、行政不服審査法、行政事件訴訟法くらいですから。
「って、多いじゃないかぁ(><)」
と感じられるかも知れませんが、そうでもないんですよ。
例えば、行政手続法は40条ちょっとくらいで、憲法の半分弱くらいしかありませんし、国家賠償法にいたっては、たった6条しかありません。
判例も、憲法で勉強のコツを身に付けられてたら大丈夫です。
勉強する内容は、思うほど多くはないんです。決して少ないわけではありませんが。
行政書士試験や公務員試験では、行政法は、たくさん出題される超重要科目ナンバー1です。行政法でコケてしまうと、合格はない、と言い切れるくらい大切な科目です。なので、恐れずに、しっかりと頑張りましょう!
2.行政法の全体像
さて、行政に関する法律は、およそ600以上はあるそうです。そこで学者は、これらを大きく3つに分類して、研究をしています。
次の図表3を見てください。
【図表3:行政法の全体像】
まず1つ目の行政組織(法)ですが、これは、行政の組織について研究している分野です。言い換えると、行政の組織について書かれた法律の集まり、ということもできます。
例えば、「国の組織に、外務省をおく」とか、「国定公園の管理について」などの法律は、この分野で研究されています。
次に2つ目の行政作用(法)ですが、これは、行政の活動について研究している分野です。言い換えると、行政の活動について書かれた法律の集まり、ということもできます。
例えば、「違法駐車のレッカー移動について」とか、「生活保護の支給について」などの法律は、この分野で研究されています。
そして3つ目の行政救済(法)ですが、これは、行政の活動によって被害を受けた国民の救済について研究している分野です。言い換えると、国民の救済について書かれた法律の集まり、ということもできます。
行政は大きな仕事をしていますが、その行政を動かしているのは人間です。ですので、時には間違いをして、国民に被害が発生することもあります。その被害を受けた国民の救い方を研究しているのが、この行政救済(法)の分野なのです。
例えば、「警察に、間違ってピストルで撃たれた場合の慰謝料について」などの法律は、この分野で研究されています。
「あの~、さっきから、行政組織(法)のように、「法」という漢字に( )をつけているのはなぜですか?」
はい、あなたもいいところに気が付きましたね(^^)
さっきから、「法」という漢字に( )をしているのには、ちゃんと理由があります。
その理由とは、そのような名前のついた法律は無いからです。
ちょうど行政法という名前のついた法律がなかったのと、同じです。
例えば、行政作用(法)という名前のついた法律はありません。六法で調べても出てきません。行政の活動についての、たくさんの法律をまとめて、「行政作用法」と呼んでいるのです。
言い換えると、学者が、行政法を3つに分類したときの分野につけられるインデックスである、ということもできますね。
ですので、「行政組織法」、「行政作用法」、「行政救済法」という名前のついた法律は無い、ということを覚えておいてください。
ただし、この「法」に( )をするルールは、業界標準(?!)ではなくて、私が勝手に決めたルールです。ですので、ここから先は、「法」に( )をしないで書いていきますね。
ところで、この3つの分類で、研究の中心は「行政作用法」です。行政の活動は、とても幅広いので、研究も幅広く行われています。
その中で特に、行政が活動するときの手続きについて定められた法律がいろいろあります。その手続きを定めたの法律の中で、土台となる法律が、「行政手続法」です。
この行政手続法という法律は、ちゃんと六法に載っている法律です。そういう名前のついた法律があります。
この法律は、特に行政書士試験では、非常に重要な法律なんです。
ですので、分類の図表では出てきませんでしたが、行政手続法という法律も、行政法で勉強するということを、知っておいてください。
3.行政法の学習ポイント
行政法を得意にするためのポイントは、2つあります。
まずは、専門用語に慣れる、ということです。
憲法などの法律は、知っている用語もたくさん出てきますよね。「国会議員が・・・」とか、「裁判所が・・・」という用語は、たいていの方が、もともと知っている用語です。
でも、行政法では、普段生活していて、使わない専門用語が、ウンザリするくらい、たくさん出てきます。
例えば、「法規命令」とか、「覊束裁量」などなど。
「覚えるどころか、漢字が読めない~(><)」というくらい、難しい用語が出てくるのが、行政法の特徴です。
ですので、初めて行政法を勉強するとき、
「なんか、とっつきにくい法律だなぁ」
「イメージがつかめなくて、勉強していてもおもしろくないよ」
と感じられる方がたくさんいらっしゃいます。
ですので、あなたがそう感じられても、あなたが例外なのではありませんよ。みんなそうなんです。私もそうでした。
だから、とにかく用語に慣れるまで、じっくりと腰を落ち着けて、勉強をし続けることが重要です。
行政法は、頭の良い悪いより、根気よく勉強をし続けることができるかどうかが、一番のポイントになりますね。
そして、用語に慣れてくると、
「あれ?行政法ってこんなに簡単だったっけ?」
「なんか、点数が取りやすいぞ」
と感じられるようになってきます。
このように行政法は、用語のカベを越えると、とたんに成績が急上昇する科目でもあります。人によって違いはありますが、だいたい3ヶ月ほどガンバルと、結果が出るようになってきますよ。
とにかくそれまでは、ガマンガマンp(^^)q これが行政法を得意にするコツです。
もう1つが、重要度によって、勉強の力の入れ方を変える、ということです。
前半は、基礎用語と、基本的な考え方、基本判例を憶える程度にしておき、後半に力を残しながら勉強を進めるのが、行政法で点数を取るためのコツですよ。
ちょうど、マラソンで、前半飛ばしすぎるとバテてしまい、勝負に勝てない、みたいなものですね。
では最後に、次の図表5で、行政法を得意にするコツを2つまとめておきますので、頭の中に入れておいてください。
【図表4:行政法の勉強のコツ】
(終わり)
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