法律入門講座「行政法【行政不服申立て(2)『内容』】」ークマべえの生涯学習大学校ー

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行政法「行政不服申立て(2)『内容』」

ここは、行政法「行政不服申立て(2)『行政不服申立ての内容』」を講義している教室です。
今回は,行政不服申立ての内容について,もう少し詳しく見ていきますね。

1.行政不服申立ての内容

前回,不服申し立ての種類で,例としてあげたのは,行政庁の処分に不満があるので文句を言う,というものでした。

でも,不服申し立てができるのは,処分に不満がある場合だけじゃありません。
行政庁の不作為[ふさくい]についても,不服申し立てができます。

例えば,一般の人Bさんが,喫茶店を営業しようと,行政庁に申請をしました。
しかし,いつまで経っても行政庁は,許可するとも,許可しないとも言いません。
このように,行政庁が何にも反応しないことを,行政庁の不作為といいますが,この行政庁の不作為についても,異議申立てや審査請求ができるのです。
下の図表1で,イメージを確認してみてください。

【図表1:不作為についての不服申立て】

不作為についての行政不服申立てのイメージ

2.不服申し立ての要件

行政不服審査法が定められる以前は,訴願[そがん]法という法律がありまして,この法律に基づいて不服申し立てをしていたわけですが,この訴願法では,法律に定められた場合に限り不服申し立てができるという,列記[れっき]主義が採られていました。

しかし,一般の人を広く救済しようということで,行政不服審査法では,概括[がいかつ]主義が採られました。
概括主義とは,法律が定めている例外を除き,広く不服申し立てをすることを認める,という立場のことです。
次の図表2を確認してください。

【図表2:列記主義と概括主義】

列記主義と概括主義

3.どの不服申し立てをすれば良いか?

不服申し立てには,異議申立てと審査請求があるといっても,私たちがどちらかを好き勝手に選べるわけではありません。
では,どっちをすれば良いかについて,処分に対する不服申し立てと,不作為に対する不服申し立てに分けて見ていきましょう。


(1)処分

処分の場合は,審査請求をするのが原則で,異議申立ては審査請求ができない場合にのみできることになっています。
これを,審査請求中心主義といいます。

しかし,例外的に,各個別の法律で,審査請求も異議申立てもできるとされている場合があります。
この場合は,まず異議申立てを行い,それでも納得がいかない場合は審査請求をする,という順番で行います。
これを,異議申立て前置[ぜんち]主義といいます。


(2)不作為

行政庁の不作為の場合は,異議申立てでも審査請求でも,どちらをしても良いですし,どちらを先にしても良いことになっています。
これを,自由選択主義といいます。

以上,かなりややこしい制度になっていますので,次の図表3を使って,頭の中を整理して記憶しておきましょう。

【図表3:不服申立ての諸主義】

不服申立ての諸主義

4.不服申立期間

以前,行政行為の効力を勉強したとき,不可争力[ふかそうりょく]という語が出てきました。
これは,たとえ行政行為に不満があっても,一定期間を過ぎると
「この行政行為は違法だ!取り消して!」
と言えなくなるものでした。

これについて,行政不服審査法では,原則,処分があったことを知った日(の翌日)から60日以内にしなければならないと定められています。
次の第14条第1項本文を確認してみてください。

第14条第1項本文

審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内(~略~)に、しなければならない。

この日数を過ぎると,不可争力が発生し,審査請求できなくなります。
次の図表4でイメージを確認してみてください。

【図表4:不服申立期間】

不服申立期間

4.教示制度

ここまで、行政不服申し立てについて勉強してきたわけですが、裁判手続きに比べると簡易・迅速といっても、かなり複雑だったでしょう?
これじゃあ、広く一般の人を救済するといっても、手続きの仕方が分からないので、不服申し立てをしたくてもできず、全然救済されませんね。

そこで、行政不服審査法では、行政が一般の人に
「あなたにした処分に不満があれば、審査請求できますよ。」
と、教えてあげる制度を盛り込みました。

これを、教示[きょうじ]制度といいます。

例えば57条1項では、行政庁は、不服申し立てができる処分を書面でする場合は、その処分をする相手(一般の人)に対して、

・「不服申し立てできますよ」と,不服申し立てができることを教えてあげること
・「不服申し立てをする行政庁はAですよ」と,不服申し立てをすべき行政庁を教えてあげること
・「いついつまでに不服申し立てしないといけませんよ」と,不服申し立てができる期間を教えてあげること(不可争力が発生したら申し立てできなくなりますから。)

を教示しなければならないと定めています。

また、行政が間違ったことを教示してしまった場合、それを信じた一般の人に不利益がないように配慮がなされています。

では,次の図表5でイメージを確認してみてください。

【図表5:教示制度】

教示制度のイメージ

5.執行停止制度

例えば、行政庁Aが、一般の人Bに
「あなたの建物は危険です!壊しなさい!」
と処分してきました。

それに対してBさんは、
「私の建物は違法じゃない!そんな処分は取り消して!」
と不服申し立てをしたとします。

でも、この処分には公定力[こうていりょく]があるので、取り消すまでは有効なものとして扱われます。
なので、不服申し立てをしている途中でも
「早く壊さないと、代執行[だいしっこう]しますよ!」
と言ってきたり、ほんとに行政が代執行して強制的に壊してしまうかもしれません。

このように、不服申し立てをしても、行政の活動はストップしないんです。
これを、執行[しっこう]不停止の原則といいます。

「それじゃあ不服申し立ての制度があっても意味ないじゃん」
そう思いますよね。

そこで、行政不服審査法では、例外的に、不服申し立てに対する判断(裁決や決定というのでしたね)が出るまで、行政の活動をストップする制度を定めました。
これを執行停止といいます。

後に学ぶ行政事件訴訟法でも、執行停止の制度は定められているのですが、行政不服申し立てでの執行停止の制度の方が、要件が緩やかなので、執行停止を認めてくれる可能性が高いと言えるでしょう。

では,次の図表6でイメージを確認してみてください。

【図表6:執行停止制度】

執行停止制度のイメージ

(終わり)

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