クマべえの生涯学習大学校

行政法「行政行為の取消と撤回」

ここは、行政法「行政行為の取消と撤回」を講義している教室です。
今回は、行政行為の取消と撤回について学びましょう。


1.行政行為の取消

まず初めに、行政行為の取消について、前回の復習をしながらお話ししましょう。
その中で、争訟取消しという用語と職権取消しという用語についても触れますので、少し注意力を傾けてみてくださいね。


前回の「行政行為の効力」で、私たちは公定力という効力を学びました。

行政行為には、原則この公定力が働くので、たとえ違法な行政行為であっても、一応有効なものとして扱われます
ですので、行政行為を受けた人は、一応その行政行為に従わなくてはならないのでした。

もし、その違法な行政行為に従いたくないならば、例えば裁判所に行って「行政行為は違法だ!取り消してくれ!」と訴えなければならないのでしたね。
そして、裁判所がこの訴えを認めてくれて、「うん、確かにこの行政行為は違法だ。だから取り消す!」という判決をすれば、その行政行為は取り消されるのでしたね。

このように、裁判所などで「行政行為は違法だ!取り消してくれ!」と争い、その結果、裁判所などがその行政行為を取り消すことを、争訟[そうしょう]取消しと呼びます。

ところで、違法な行政行為をした行政庁が、「あれ?違法な行政行為をしてしまったようだぞ。」と気付いたため、その行政庁自ら「あの行政行為は違法でした。だから取り消します!」ということもあります。
このように、違法な行政行為をした行政庁自らが、その違法を認めて取り消すことを、職権取消しと呼びます。

では、ここまでを次の図表1で、イメージをつくっておきましょう。

【図表1:争訟取消しと職権取消しのイメージ】

争訟取消しと職権取消しのイメージ

さて、この行政行為の取消は、行政行為が違法であるから行うものです。
そのため、行政行為が取り消されると、初めから行政行為をしなかったことになります。
言い換えると、行政行為をした時にまでさかのぼって、その行政行為の効力が否定されるのです。
これを、遡及効[そきゅうこう]といいます。
行政行為の取消には、この遡及効が認められるのです。

次の図表2で、イメージを確認してみてください。

【図表2:取消の遡及効のイメージ】

取消の遡及効のイメージ

2.行政行為の撤回

では次に、行政行為の撤回[てっかい]について学びましょう。

この行政行為の撤回は、さっき説明しました行政行為の取消とよく似ていますが、少し性質が異なるんです。

例えば、行政庁Aが、一般人Bに、普通自動車の免許を与えたとします。この「免許を与える」ということも、行政行為の一種です。
そしてその後、Bは飲酒運転をしたため、運転免許を取り消されました。

言い換えると、飲酒運転を理由に、「免許を与える」という行政行為を否定したのです。

この運転免許の取り消しのようなものが、行政行為の撤回にあたるのです。

「ん?行政行為の取り消しと同じじゃないか。」

そうですね。さっきの行政行為の取消と、同じように思えます。

しかし、決定的に違う点があるんです。それはどこか分かりますか?

「ぜ~んぜんわっかりませ~ん!」

いいですよ、分からなくても。
今から説明しますので、じっくりと理解を進めてくださいね。

まず、行政庁Aが一般人Bに運転免許を与えた時点で、その「免許を与える」という行政行為には、違法な点がありませんね。
ここが、行政行為の取消との、大きな違いです。

行政行為の取消は、行政行為が違法であるときに行われるものでした。

それに対して、行政行為の撤回は、行政行為が行われた時点では、違法ではないときに行われるものです。

そして、その後に発生した事情(例で言えば飲酒運転)によって、行政行為(運転の免許)の効力をなくしてしまう、というものが、行政行為の撤回なのです。

ちなみに、行政行為の撤回にあたる場合でも、法律では「取消し」という用語を使っていることが多いので、注意しておきましょう。
さっきの「運転免許の取り消し」なんて、典型的な例です。法律の用語としては「運転免許の取り消し」といっていますが、実は行政行為の撤回の性質を持つものなんです。

それでは、行政行為の撤回のイメージを、次の図表3で、つくっておきましょう。

【図表3:行政行為の撤回のイメージ】

行政行為の撤回のイメージ

そして、行政行為の撤回についてもう1つ、行政行為の取消と異なる点があるんです。

それは、行政行為の撤回には、遡及効がない、という点です。
つまり、行政行為が撤回されると、その撤回の時から将来に向かって、その行政行為の効力がなくなるんです。

言い換えると、行政行為が行われてから撤回されるまでの間は、その行政行為は有効なままで、撤回されてから後は、その行政行為の効力はなくなる、ということです。

例えば、運転免許がされてから、免許取消しになるまでの間は、運転免許は有効なままなので、その期間に無免許運転をしていたことにはならないのです。
しかし、免許の取消しがされた後は、運転免許は無効になるので、もし自動車を運転すると、無免許運転をしていることになります。

このような、行政行為の撤回の効力を、将来効ということもあります。

では、この将来効のイメージを、次の図表4で確認しておきましょう。

【図表4:撤回の将来効のイメージ】

撤回の将来効のイメージ

それでは最後ですが、次の図表5に、行政行為の取消と撤回について、異なる点をまとめておきましたので、しっかりと憶えておきましょう。

【図表5:取消と撤回のまとめ】

取消と撤回のまとめ

(終わり)

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