憲法「人権全体像、自由権全体像」
ここは、憲法「人権全体像、自由権全体像」を講義している教室です。
ここから先、当分の間は、憲法の中心分野である、基本的人権についてのお話が続きます。
まずこの教室では、基本的人権の全体的なことと、基本的人権の一つである自由権の全体的なことをお話します。
1.基本的人権の全体像
まずは、基本的人権の全体像から見ていきましょう。
ところで、基本的人権って何だか解りますか?
基本的人権とは、簡単にいうと「人間が人間として当然持っている基本的な権利」のことです。
と言われても、抽象的で解りづらいですね。
具体的に、どのような権利を基本的人権として認めるかは、歴史的・社会的に決まるものなので、ここでは、「人間が生まれながらにして持っている、当然の権利なんだな」という程度で、おおまかに理解しておけばいいでしょう。
【図表1:基本的人権のイメージ】
さて、憲法では、いろいろな基本的人権が定められています。それらは、次の図表2のように、大きく4つに分類することができます。
ただ、この分類は、絶対的なものではありません。しかし、効率よく勉強を進めるために、全体像を覚えておいた方がよいので、あげておきますね。
【図表2:基本的人権の全体像】
まずは、この分類図を、頭の中に入れてください。
それでは、1つずつ説明しますね。
(1)自由権
自由権とは、時代でいうと18世紀頃に主張された人権なので、18世紀的権利とも言います。
その内容は、
- 「国家権力よ、私たちのことは、ほっといておいてくれ!」
- 「国は、私たちの人権を制限するな!」
- 「私たちの、自由にさせてくれ!」
と主張する権利です。
ですので、自由権のことを、国家権力の力から、自由にさせてもらう権利ということで、「国家からの自由」ということもあります。
日本国憲法では、「学問の自由」や「財産権の保障」などが、この自由権にあたります。
【図表3:自由権=18世紀的権利=「国家からの自由」】
(2)参政権
参政権とは、時代でいうと19世紀頃に主張された人権なので、19世紀的権利とも言います。
その内容は、
- 「政治は権力者だけのものではないぞ!」
- 「私たちにも、政治を行わせろ!」
と、国家の運営・政治に参加することを主張するものです。
ですので、参政権のことを、国家の運営へ参加する自由ということで、「国家への自由」ということもあります。
日本国憲法では、「選挙権・被選挙権」が、この参政権にあたります。
【図表4:参政権=19世紀的権利=「国家への自由」】
(3)社会権
社会権とは、時代でいうと20世紀頃に主張された人権なので、20世紀的権利とも言います。
その内容は、
- 「国家は積極的に人権を保障せよ!」
- 「国家権力で、私の人権を保障してくれ!」
と、国家によって、積極的に人権を保障してもらうことを主張するものです。
例えば、
- 「生活が苦しいから、生活費が欲しい」
- 「最低限の生活をする権利を、国家権力で保護してくれ」
と主張する人権のことをいいます。
ですので、社会権のことを、国家により人権を保障してもらうということで、「国家による自由」ということもあります。
日本国憲法では、「生存権」や「労働基本権」などが、この社会権にあたります。
【図表5:社会権=20世紀的権利=「国家による自由」】
(4)その他の人権
その他、憲法では、受益権という人権もあります。この受益権は、別名「国務請求権」ともいい、権利の救済などを国家に対して求める権利ことです。
そう言われると、内容は社会権に近いように感じますけど、歴史的には、自由権のなかまとして主張された権利なんですよ。
日本国憲法では、「請願権」や「裁判を受ける権利」などが、この受益権にあたります。
【図表6:受益権=「国務請求権」】
以上、人権の全体像でした。 これから先、細かいことを勉強しているときに、もし、
- 「あれ?自分は今何について学んでいるんだろ?」
- 「頭の中の知識がゴチャゴチャして整理できていないな?」
と感じられたら、常に今回学んだ全体像を確認して、勉強を進めてください。
面倒なように思いますが、こまめに全体像を確認することが、理解する一番の近道ですからね。
2.自由権の全体像
ここからは、基本的人権を分類したものの一つである自由権について、もう少し詳しくお話していきます。まずは、自由権の全体像からです。
自由権と呼ばれる人権は、憲法で、いろいろなものが定められています。それらを分類すると、次の図表7のように、「精神的自由権」、「経済的自由権」、「人身の自由、または身体的自由権」の3つに分類されます。
まずはこの3つの分類の名前を覚えましょう。
【図表7:自由権の分類】
それぞれのおおまかな内容ですが、まず、精神的自由権とは、人間の心の中や、その心の中のものが外に出たものなど、精神的な活動についての自由のことをいいます。
例えば今、私は、自分が学んできた知識やノウハウを講義していますが、このような講義をする自由も、精神的自由権の1つです。
次に、経済的自由権とは、職業を選んだり、自分の財産を持ったりするといった、経済活動を行う自由のことをいいます。
例えば、あなたが行政書士や公務員を目指されているとすると、それは、経済的自由権の1つです。
そして、人身の自由とは、拷問を受けたり、不当に逮捕されない権利のことをいいます。
例えば、裁判を受けることなく犯罪者にされることはない、というのも身体的自由権の1つです。
以上、3つの自由権でした。この3つの自由権について、簡単でいいですから、イメージをつかんでおいてください。
次回から、3つの自由権について、条文にあたりながら、詳しく見ていきますね。
(終わり)
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