民法の全体像「民法のつくり」
ここは、民法の全体像「民法のつくり」を講義している教室です。
今回は,民法のつくりについてお話しますね。
1.パンデクテン方式
前回お話しましたように,民法には条文数が1000条を超えるたくさんの定めがあります。これを,テキトーに並べているとすると,必要な条文を探すのが一苦労しますよね。
例えば,あんぱんを買いにコンビニに行ったら,商品がてんでばらばらに置かれていて,あんぱんを探すのに一苦労する,みたいに。
そこで,民法では,パンデクテン方式と呼ばれる整理の仕方で,条文が分類・整理されています。
このパンデクテン方式というのは,共通のルールを前に出すという整理の仕方で,中学校の数学で学ぶ因数分解のようなことをする整理の仕方です。
例えば,あるテニスサークルのルールに,次の2つのルールがあったとします。
「練習は,週3回行う。その曜日と時間は,月初めの定例会議で決めるものとする」
「懇親会は,月1回行う。その日時・場所等必要な事項は,月初めの定例会議で決めるものとする」
この2つのルールには,共通な部分がありますよね。「月初めの定例会議で決めるものとする」という部分です。
この共通な部分を前に出して別の条文にして,整理するんです。
すると,こうなりますね。
「月初めに定例会議を行う。その会議では,練習や懇親会の細目について定めるものとする。」
「練習は,週3回行う。」
「懇親会は,月1回行う。」
このようにして,共通部分をまとめて前に出して,共通部分が繰り返し出てこないように整理する方法が,パンデクテン方式といい,民法の整理の仕方として取り入れられているのです。
2.民法の構成
そして,分類・整理された結果,民法は,総則,物権,債権,親族,相続,の5つの編に分けて整理されています。
まず,総則編では,民法の共通部分についての定めが置かれています。
ただ,民法全体の共通規則というよりも,物権・債権の共通部分という意味合いが強いです。
そして,物権編では,物に対する権利について定めています。
例えば,あなたが持っている本は,あなたのものですよね。あなたは,その本を,読んでも良いし,書き込みをしても良いし,分かりにくくてイライラしたら,破り捨てても良い(?!)ですよね。
この本のように,物に対する権利を定めたものが,物権編にまとめられています。
そして,債権編では,人に対する権利について定めています。
例えば,あなたが友人に1万円を貸したとします。すると,あなたは友人に「1万円を返して~!」ということができますよね。
この友人のような「人」に対して「貸した金返せ」と請求したりする権利のことを「債権」といいます。
債権の「債」という字を,へんとつくりに分けると「人」と「責」になりますよね。つまり債権とは,「人」に「責」任を負わせる権利ということができます。
このような債権についての定めがまとめられているのが,債権編です。
そして,親族編では,その名の通り,家族関係のルールについてまとめられています。
最後に,相続編では,ある人が死亡した場合,その人の財産の引継ぎについて定められています。
このようにして,民法の条文は,その内容で分類・整理されているんです。
ちなみに,総則・物権・債権は,主に財産についてのルールなので,これら3つをまとめて財産法と呼び,親族・相続は,主に家族関係がからむルールなので,これら2つをまとめて家族法(以前は身分法とも)と呼ぶこともあります。
【図表1:民法の構成】
(終わり)
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