クマべえの生涯学習大学校

民法の全体像「プロローグ」

ここは、民法の全体像「プロローグ」を講義している教室です。

ここでは,主に民法を学習するにあたっての注意すべきポイントについてお話しますね。


民法という法律は,私たちの生活に深くかかわっている法律ですので,憲法や行政法に比べてなじみやすい印象を持っていただけると思います。
その反面,条文数が1000条を超えるという,気の遠くなるような量があります。
日本国憲法が約100条ですから,その10倍・・・
てことは,マスターするために必要な勉強量も10倍・・・
憶えなければならないことも10倍・・・
なんて考え出すと,
「あっ,自分には無理~」
なんて思われる方も出てきてしまうかも知れませんが,勉強の押さえどころを意識して学ばれますと,民法を学ぶ面白さ,興味深さを味わっていただけると思います。
ですので,どうか食わず嫌いにならずに,じっくりと取り組んで頂きたいなと思っています。

さて,その民法の勉強の押さえどころについてですが,初めて民法を学習される方にとって大切なことをお話しておきますと,

まず1つ目は,「その内容の多くは,常識的な内容である」ということです。
例えば,民法732条に「配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。」と書いてありますが,常識的に考えて「そんなん当たり前やん」と,ツッコミを入れることができますよね。

確かに民法は,条文数が多いですけど,このような常識的な内容も多く含んでいます。
ですので,そういう条文の内容は,憶える必要はなくて,ただ「そんなことを定めているんだなあ」と,確認して,他の制度の理解の助けにすれば良いということです。


2つ目は,例えばまとめ本などを使って丸暗記をして,手っ取り早く試験対策をしようとすると,かえって遠回りになってしまう,ということです。

民法は学習量が多いので,何とか手早く試験対策をしたいという気持ちはよ~く分かりますが,そのたくさんの量を,あいまいな理解で暗記しようにも,限界がありますし,憶えてもすぐに忘れてしまいます。
ですので,用語などを憶えるときは,意味を理解することや,その条文が定められた理由や,具体的イメージや,他の用語や制度とのつながりなどを意識することが大切です。

例えば,これも常識的な内容の条文ですが,4条に「年齢二十歳をもって、成年とする。」とあります。
満20歳で成年となり,それまでは未成年であるということは,民法で定められているんですね。
私が大学生のとき,これを知って,「そんな身近なことって,民法で定められているんだーすげー」と,感動したのを憶えています。

で,これを受けて,5条1項に「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」
と定められているんです。

いきなり,意味が分からなくなるでしょう?
それは,「法律行為」「法定代理人」の言葉の意味が分からないのと,
この条文のような定めがある理由が分からないのと,
「単に権利を得,又は義務を免れる法律行為」の具体的なイメージが沸かないからです。

逆に言うと,言葉の意味が分かり,理由が分かり,具体的なイメージが沸くと,この条文の意味が分かります。

で,このときに,法律行為や法定代理人という用語を,ただ憶えるだけでなく,未成年者についての条文で使われていることや,その他の制度でも出てくることや,それらの条文が置かれている理由などと合わせて,用語を憶えていくと,憶えやすいし,忘れにくいし,何より使える知識となっていきます。

実際に,民法にしっかりと取り組んでられる方に,「法定代理人って何ですか?」と質問をすると,スラスラと答えてくれると思います。
しっかりと学習された方にとっては,「法定代理人」は,あたかも常識的な用語くらいに感じられるものですから。
これを,まとめ本などで「法定代理人とは,○○○という意味である」を丸暗記しても,憶えにくいし,忘れやすいし,何より使えません。
まとめ本などは,一通りしっかりと勉強された方が,試験直前に知識を整理するためのものだということですので,適材適所で使っていくことをおすすめします。


最後に3つ目は,いきなり細かい内容に入らないで,全体像を押さえる,ということです。

「木を見て森を見ず」なんて言われますが,細かい内容を気にするあまり,全体像があやふやになると,民法の「森」でさまようことになってしまいます。
それも,民法の「森」って,富士の樹海並みという噂も・・・
それは言い過ぎかも知れませんが,とにかく,細かいことが気になるのもよ~く分かるんですが,とりあえずそれは横に置いておいて,民法の全体像をしっかりと押さえていくことを心がけて,学習を進めてみてくださいね。


さて,次回から民法の内容に入っていくわけですが,進め方としましては,まずは民法の全体像を見ながら,民法の各部分を理解するのに必要な知識について,説明をしていきます。

そしてその後に,民法の最初である「総則」というところから順に説明をしていく予定です。

それでは,民法の学習も頑張っていきましょう!


(終わり)

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