法律入門講座「憲法【裁判所(1)】」ークマべえの生涯学習大学校ー

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憲法「裁判所(1)」

ここは、憲法「裁判所(1)」を講義している教室です。


1.司法権

まずは,司法権についてお話しますね。

司法とは,日本国憲法では「司法とは裁判のことだ」と理解しておいて大丈夫ですが,難しい言い方をすると,「具体的な争訟について,法を適用し,宣言することによって,これを裁定する国家の作用」と考えられてきました。
ここでは,「具体的な争訟」であることが必要なことと,「法を適用して解決する」ことができなければならないという点に注目しておきましょう。
つまり,具体的な争いがあって,それを法律を当てはめて解決するのが司法=裁判である,ということです。
ですので,次の(1)~(3)のように,具体的な争訟がなかったり,法律を適用して解決することができなかったりすることについては,裁判所は審査できないということになります。

(1)具体的事件性もないのに,抽象的に法令の解釈などについて争うこと

例えば,なんら事件が起こってもいないのに,裁判所に
「自衛隊って,憲法9条に違反していますよね?」
という訴えを起こしても,裁判所はそのことについては審査できません。

ただし,行政事件訴訟法でいう民衆訴訟などは法律が定めた例外として,具体的事件性がなくても裁判できる例があります。

(2)単なる事実の存否[そんぴ],個人の主観的意見の当否[とうひ],学問上・技術上のことについて争うこと

例えば,「私,行政書士試験に不合格だったんですが,合格するだけの法律的素養がありますよね?」
という訴えを起こしても,裁判所は審査できません。
そりゃ裁判官も「そんなん言われても知らんがな」と思いますよね。

(3)宗教上の教義に関する判断自体を求めるなどの訴え

例えば,「私が今おがんでいる仏像って,私の願いを叶えてくれますよね?」
と裁判所に訴えても審査できません。
これまた,「そんなん言われても知らんがな」ですよね。

このように,何でもかんでも問題を解決することができるわけではないということを,具体例を踏まえて理解しておきましょう。


2.司法権の限界

次は司法権の限界についてなんですが,さっきの話と違うのは,具体的な事件が起こっていて,それに法律を当てはめて解決できるものではある,つまり法律上の争訟に当たるんだけれど,その問題は裁判所は扱うことができないと考えられていることをいいます。
次の図表1を見てください。

【図表1:司法権の限界のイメージ】

司法権の限界のイメージ

この図での,黄色で塗られた「例外」の部分に当たるのが,今からお話する司法権の限界です。

この司法権の限界にはいろいろあるのですが,例えば,議員の資格争訟の裁判や,裁判官の弾劾裁判のように,憲法の条文で定められているものや,国際法上,治外法権とされているものや条約で裁判権を制限しているものなどがあります。
その他にもあるのですが,この入門講座としては,以前,平和主義の単元で学んだ,砂川事件という判例で出てきた「統治行為」について,もう少し深く見ておきたいと思います。

統治行為とは,「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為」のことで,政治問題とも呼ばれるものです。
つまり,政治判断が必要なものは,三権分立でいう立法・行政が判断すべきもので,裁判所は首をつっこまない方が良い,とするものです。

これについて,裁判所は,衆議院の解散について争われた「苫米地[とまべじ]事件(最大判昭和35.6.8)」で「(衆議院の解散は)裁判所の審査権の外にあり,その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府,国会等の政治部門の判断に委され,最終的には国民の政治判断に委ねられている」として,統治行為を真正面から認めました。
そして,「この司法権に対する制約は,結局,三権分立の原理に由来し」として,三権分立の原理から,政治問題を裁判所で扱うべきものではない,との判断をしています。
次の図表2で,イメージをつかんでおきましょう。

【図表2:統治行為論】

統治行為論

3.裁判所の組織

それでは次に,裁判所の組織についてです。
まずは,次の条文を見てください。

第76条第1項

すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。

このように,すべて司法権は,最高裁判所と,裁判所法という法律で定められた下級裁判所に属することが定められています。
そして,裁判所法2条1項には,

裁判所法第2条第1項

下級裁判所は、高等裁判所、地方裁判所、家庭裁判所及び簡易裁判所とする。

と,下級裁判所として,高等裁判所地方裁判所家庭裁判所簡易裁判所の4つを定めています。

これら以外に,例えば内閣を批判した人だけを裁くために「内閣裁判所」を設置する,なんてことはできません。(もちろん,そんな裁判所なんて無いですよ)

この「内閣裁判所」の例のように,ある特定の人とか特定の事件だけを扱う,最高裁判所から簡易裁判所の系列に属しない裁判所を特別裁判所と言いまして,日本国憲法では,その設置を禁止しています。

第76条第2項前段

特別裁判所は、これを設置することができない。

【図表3:裁判所の系列】

裁判所の系列

ちなみに,家庭裁判所少年事件や家庭事件など特定の事件を扱いますが,通常の裁判所の組織系列に属する裁判所なので,特別裁判所ではありません

なお,国会が設置する弾劾裁判所(64条)は,憲法が認めた特別裁判所にあたると考えられています。

では次に,行政機関が行う裁判についてお話します。まずは次の図表4を見てください。

【図表4:行政不服申立て制度】

行政不服申立て制度

これは,行政不服申立ての制度を表した図なのですが,行政の人Aと一般の人Bが,法律上の争いをしています。
この争いを解決するため,別の行政の人Xが,AとBの間に入って裁判のようなことを行っています。
この行政の人Xが行っているようなことを行政不服申立てというのですが,この制度のように,行政機関が裁判に似たことを行うことは認められているんです。
ただ,その行政機関(図表4のX)の判断が最終的な判断になってはいけないこととされています。
次の憲法の条文を見てください。

第76条第2項後段

行政機関は、終審[しゅうしん]として裁判を行[]ことができない。

つまり,行政機関は,「終審」としては裁判を行うことができませんが,「前審」としてなら裁判のようなことを行っても良い,ということです。
次の図表5で,イメージを確認してみてください。

【図表5:行政機関が行う裁判】

行政機関が行う裁判

(終わり)

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