クマべえの生涯学習大学校

憲法「国務請求権」

ここは、憲法「国務請求権」を講義している教室です。

今回は,基本的人権の1つである国務[こくむ]請求権について説明しますね。

国務請求権とは、別名受益権とも言いまして、人権を確保するための基本権とも呼ばれています。
つまり、人権の保障を、より確かなものにするための人権が国務請求権だということです。

その性質は、国家に「○○してくれ!」と要求する権利なので、一見すると社会権に近いように思えますが、歴史的には市民革命期に自由権とともに叫ばれた権利なので、自由権の仲間ということができます。
とはいえ、請願権のように参政権に近いものもありますが。

さて、この国務請求権ですが、日本国憲法では、請願権裁判を受ける権利国家賠償請求権刑事補償請求権の4つが定められています。
それでは、その1つずつを見ていきましょう。


1.請願権

請願権とは、国や公共団体に「○○して欲しい」と希望を述べる権利のことです。
次の16条を見てください。

第16条

何人[なんぴと]も、損害の救済、公務員の罷免[ひめん]、法律、命令又は規則の制定、廃止又は改正その他の事項に関し、平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇[たいぐう]も受けない。

憲法のこの定めを受けて、請願法という法律が作られています。
請願法は、たった6条しかないので、一度目を通しておくと良いと思います。

で、この請願法5条では、「この法律に適合する請願は、官公署において、これを受理し誠実に処理しなければならない。」と定められています。
これは、請願を受け付けた行政機関は、誠実に処理する義務が課されているだけで、請願の内容を審理したり判定したりする義務までは課されていないということです。


2.裁判を受ける権利

裁判を受ける権利とは、政治権力から独立した公平な司法裁判所で裁判を受けることができる権利で、そのような司法裁判所以外の機関から裁判されることのない権利も含んでいるものです。
そして、その裁判とは、民事裁判、刑事裁判だけでなく、行政事件裁判も含むと考えられています。
それでは、次の32条を確認してみてください。

第32条

何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪[]れない。

3.国家賠償請求権

国家賠償請求権とは、公務員の不法行為に対して損害賠償を請求する権利のことで、明治憲法には定められていませんでした。
そして、この憲法の保障を受けて、国家賠償法が定められています。
国家賠償法については、行政法で学びますね。
それでは、次の憲法17条を確認してみてください。

第17条

何人も、公務員の不法行為により、損害を受けたときは、法律の定めるところにより、国又は公共団体に、その賠償を求めることができる。

4.刑事補償請求権

刑事補償[ほしょう]請求権とは、刑事手続きで抑留[よくりゅう]拘禁[こうきん]された被告人に無罪の判決が下された場合、「無罪なのに身柄を拘束された」という損失を,お金で補償してもらえる権利のことで、これも明治憲法には定められていませんでした。
そして、この憲法の保障を受けて、刑事補償法が定められています。
それでは、次の憲法40条を確認してみてください。

第40条

何人も、抑留又は拘禁された後、無罪の裁判を受けたときは、法律の定めるところにより、国にその補償を求めることができる。

(終わり)

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