法律入門講座「憲法【前文・天皇・平和主義】」ークマべえの生涯学習大学校ー

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憲法「前文・天皇・平和主義」

ここは、憲法「前文・天皇・平和主義」を講義している教室です。
ここでは、日本国憲法の、「前文」と、「天皇」と、「平和主義」についてお話をしていきます。

1.憲法前文

まずは、憲法前文[ぜんぶん]からです。下の図表1を見てください。憲法は、「第1条・・・・、第2条・・・・、」と条文が書かれる前に、前置きの文章があります。この部分を前文といいます。

【図表1:前文】


前文

例えば、小説など本を読むとき、まず初めに「前書き」が書いてあるものがありますよね。そして目次があって、本文の内容と続いています。
前文も同じようなものです。前文は、憲法の本体である各条文に入る前の、「前書き」にあたります。

これが憲法前文なのですが、単なる前置きの文章かと思ったら大間違い、結構重要な文章なのです。例えば、前文には、次のような文があります。六法などをお持ちなら見てみてください。

  1. 『・・・自由のもたらす恵沢[けいたく]を確保し・・・』
  2. 『・・・主権が国民に[そん]することを宣言し・・・』
  3. 『・・・戦争の惨禍[さんか][おこ]ることのないやう[よう]にすることを決意し・・・』

これ、何を表している文か、解りますか?

まずは、国民の自由、つまり基本的人権の尊重を表しています。国民のいろいろな人権は,この憲法で保障しますよ、と言っています。

次にiiは、国民主権を表しています。国民主権とは、日本の国の運営方法は、最終的には国民が決定するんだ、国民にはそういう力があるんだ、という意味です。国民主権も、憲法で保障されていますよ、と言っています。

そしてiiiは、平和主義を表しています。これは言葉通りですね。日本は戦争反対、平和を愛する国ですよ、と言っています。


さて、これら基本的人権の尊重、国民主権、平和主義って、覚えていますか?そう、中学生の頃に学んだ、憲法の三大理念ですね。

はるか遠~い昔のこと(?!)なので、記憶もかすかに残っているだけだと思われる方もいたりするのですが(笑)
この三大理念については、次の図表2で、イメージを確認してみてください。

【図表2:憲法の三大理念】

憲法三大理念

ともかく、中学生の時に習うような重要なことが、憲法前文で書かれているんだ、ということを理解しておいてください。
あとは、憲法の前文を、繰り返し繰り返しよく読んでおきましょう。そのとき,漢字で書かれた熟語に注意して覚えておくんです。例えば、「正当に選挙された」の「選挙」とか、「自由のもたらす恵沢」の「自由」「恵沢」とかです。


2.天皇

次は、天皇制についてです。

天皇のことは知ってますか?「聖徳太子は推古天皇に力を貸した」というようなことを、歴史の時間に勉強しましたよね。これまた
「遠い昔のことで、記憶がぁ~(><)」
と頭を抱えていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるようで(笑)

さて、天皇は、歴史の時間で学んだように、日本の国の権力を握っていました(余談ですが、武士が実権を握っていた時代もありましたね。江戸時代の徳川家康など)。
でも、今の天皇は、国の権力を握っていません。次の条文を見てください。

第1条

天皇は、日本国の象徴[しょうちょう]であり日本国民統合[とうごう]象徴であつて、 この地位は、主権の[そん]する日本国民の総意[そうい][もとづ]く。

さあ、条文の中に、重要なキーワードが出てきましたよ。それは「象徴」という言葉です。
象徴という言葉は、「抽象的[ちゅうしょうてき]なものを具体的なもので表したもの」という意味です。

下の図表3を見てください。例えば、「白いハトは平和の象徴だ」という風に言いますよね。これは、「平和」という抽象的なものを「白いハト」という具体的なもので表しているのです。
この例と同じように、第1条では、「日本国」「日本国民統合」という抽象的なものを「天皇」という具体的なもので表しますよ、と言っているのです。

これを、象徴天皇制と呼びます。

【図表3:象徴天皇制】

象徴天皇制

ではもう1つ、条文を見てください。

第4条第1項

天皇は、この憲法の定める国事[こくじ]に関する行為のみを行[]国政に関する権能[けんのう]を有しない。

この条文では、天皇は「国政に関する権能を有しない」と定められています。
「国政に関する権能を有しない」とは、天皇は、国の政治的なことに関わることができない、ということです。
言い換えると、天皇は、政治権力を持つことを、まったく認められていない、ということです。重要なので、しっかりと覚えておきましょう。


では、天皇の役割は何なのでしょうか?
それは、一つは、先ほど学びました「象徴」としての役割です。
そしてもう一つが、第4条で出てきた「国事に関する行為」、省略して「国事行為[こくじこうい]」を行うことです。

国事行為とは、形式的、儀礼[ぎれい]的なもので、憲法で定められているものをいいます。

具体的には、「国会の召集[しょうしゅう]」という国事行為があります。これは、「国会の会議を開くので、国会議員さん集まれ~」と号令をかけることです。

その他、「栄典[えいてん]授与[じゅよ]」というものもあります。これは、国民の中で頑張った人を表彰[ひょうしょう]したりすることです。

この国事行為も、とても重要ですよ。国事行為という用語は要チェックです。

ここで,注意しておいていただきたいのは,たとえ形式的、儀礼的なものでも,憲法で定められていないものは国事行為ではない,ということです。
学習が進むと出てきますので,今のうちに理解しておいてくださいね。

それでは国事行為について、次の図表4で、イメージを確認しておきましょう。

【図表4:国事行為】

国事行為

ここまで見てきたように、憲法では、天皇が政治権力を持つことを、徹底的に否定しています。
しかも、形式的・儀礼的な国事行為を行う場合ですら天皇は勝手に行うことはできないのです。次の条文を見てください。

第3条

天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言[じょげん]承認[しょうにん]を必要とし、内閣が、その責任を負[]

この条文では、天皇が国事行為を行う場合は、内閣の助言と承認が必要だ、と言っています。

内閣とは、内閣総理大臣と、10数名の国務[こくむ]大臣で作られる組織体です。

内閣総理大臣はおなじみですね。首相とも呼ばれています。

国務大臣という言葉は、あまり聞いたことがないのではないでしょうか?国務大臣とは、内閣という組織に所属している人のことで、ふつうは外務大臣や法務大臣などと呼ばれています。詳しくは、統治機構の部分で講義をしますので、そちらで勉強しましょう。

助言と承認とは、国事行為の実質的な決定権、くらいの意味合いで今はとらえておいてください。

この第3条の条文にあるように、天皇は国事行為をすることができるのですが、その実権は内閣が握っていて、天皇には無いのです。

言い換えると、天皇は、国事行為をするかしないかを決めることすらできません。すべて内閣が決めるのです。

次の図表5で、イメージを確認してみてください。

【図表5:内閣の助言と承認】

内閣の助言と承認

さて、ここまで天皇制について見てきましたが、理解できましたか?ある程度理解が進んだら、しっかりと記憶しておきましょう。
天皇の部分については、いろいろたくさん学びました。知識が混乱しないよう、次にまとめておきましたので、見ておいてください。

天皇制のまとめ

  1. 象徴天皇制であること。
  2. 政治権力を持っていないこと。
  3. 国事行為のみ行うこと。
  4. 国事行為には内閣の助言と承認が必要なこと。

3.平和主義

次は、平和主義についてです。

平和主義は、戦争の放棄ともいいます。まずは、次の条文を見てください。漢字が少し、というか、かなり難しいので読むのが大変ですね。

第9条第1項

日本国民は、正義と秩序[ちつじょ]基調[きちょう]とする国際平和を誠実に希求[ききゅう]し、国権[こっけん]発動[はつどう]たる戦争と、武力による威嚇[いかく]又は武力の行使は、国際紛争[ふんそう]を解決する手段としては、永久にこれを放棄[ほうき]する。

第2項

前項の目的を[たっ]するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権[こうせんけん]は、これを認めない。

この条文も、中学生の社会の時間に「テストに出すから覚えろ~!」と先生に言われますし、また、最近の憲法改正論の動きの中で、この第9条があげられたりしていますので、あなたも、この条文を知っているかも知れませんね。
ただ、何かと議論されることの多い条文なので、試験には出しにくいところです。
ですので、試験対策としては、まずはこの条文の意味をおおまかに理解し、そして漢字に注意して覚えておけばよいでしょう。

例えば、次のような記述式の問題が出た場合、漢字をかけるように覚えておけば解けますからね。

問題

次の文は第9条である。空欄にあてはまる用語を、漢字2字で記入せよ。
日本国民は、正義と(  )を基調とする国際(  )を・・・・・・(略)

では、第9条の内容を、おおまかに説明しますね。

まず、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し~」とは、日本国民は、正しく理解された国際平和を、強く願っていますよ、と言っています。

ここで、「正しく理解された国際平和」というのは、例えば「平和を守るための暴力は良い」というふうに、平和をねじまげて解釈してはダメですよ、というぐらいで理解できれば良いです。

そして、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」とは、国際的な争いを解決するために、戦争をしたり、軍事力を背景として他国をおどしたりすることは、永久に行いませんよ、と言っています。

そして第2項の「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」とは、第1項の戦争の放棄という目的を達成するため、陸軍や海軍、空軍などの軍隊は、持ちません。戦争をする時に認められる権利も持ちませんよ、と言っています。

おおまかに理解できましたか?できたら、あとは、コツコツと繰り返し条文を読んで、覚えておきましょう。漢字は書けた方が良いですね。

ところで突然ですが、問題です。「粉争」という漢字は、正しいでしょうか?
これは、間違えて書く方が、非常に多いのです。

答えは、「間違っている」です。

では、どこが間違っているか、解りますか?

それは、「粉」という漢字が間違っているのです。

」ではありませんよ。「」ですよ!

おや?まだ間違いに気が付いていない方がいらっしゃいますね(^^)

漢字の左側(へんの部分)が、「米」ではなく「糸」ですからね!気をつけて覚えましょう。


それではここで、第9条について争われた判例を見てみましょう。

判例を学ぶ場合、まずは,争点と、それに対する裁判所の判断を押さえることが大切なのでしたね。

これから学ぶ判例は、砂川事件という有名な判例で,最高裁判所の大法廷で,昭和34年12月16日に判決がなされました。

この裁判では、日米安保条約に基づいてアメリカ軍が日本に駐留[ちゅうりゅう]することは、憲法第9条の「戦力」にあたり憲法違反なのではないかが争われました。

これについて最高裁判所は、外国の軍隊は、日本国が指揮管理しているわけではないため、駐留米軍は第9条にいう戦力に当たらない、と判決を下しました。

さらに最高裁判所は、安保条約は高度の政治性を有するものであって、その内容が憲法に違反するかどうかについては,一見[きわ]めて明白に憲法に違反し無効であると認められない限り、裁判所が審査するべきものではない、という判決を下しました。
このように、裁判所が違憲性の判断を避ける理由として「高度の政治性」を挙げることがあるのですが、これを統治[とうち]行為論とか、政治問題と呼んでいます。重要な専門用語ですので覚えておきましょう。

ちなみに、テキスト等で判例が出てきたらよく、「最大判昭和34.12.16」というのが書かれていますよね。これは、最高裁判所の大法廷での判決なら「最大判」、小法廷なら「最判」、最高裁判所の大法廷での決定(基礎法学で学んでおきたいところです)なら「最大決」などと省略したものです。ご参考までに。

それでは、砂川事件判決についてまとめておきましょう。

最大判昭和34.12.16「砂川事件」
【争点】
日米安保条約に基づいてアメリカ軍が日本に駐留することは、憲法第9条の「戦力」にあたり憲法違反なのではないか。

【結論】
●第9条にいう「戦力」とは,わが国が主体となってこれに指揮権・管理権を行使しうる戦力をいうのであり,外国の軍隊は、たとえわが国に駐留するとしても戦力には該当しない。
●安保条約は,高度の政治性を有するものであって、その内容の違憲性については,一見極めて明白に憲法に違反し無効であると認められない限り、司法審査の対象外である。

(終わり)

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