法律入門講座「民法の全体像【対抗要件(1)】」ークマべえの生涯学習大学校ー

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民法の全体像「対抗要件(1)」

ここは、民法の全体像「対抗要件(1)」を講義している教室です。

今回は,対抗要件についておおまかにお話した後、動産の対抗要件について学んでいきます。


例えば,Aさんは、自分が持っているデジカメを,Bさんに売りました。

ところが,なんということでしょう!Aさんは,そのデジカメを第三者のCさんにも売る契約を結んでしまいました。

この例のように、1つの物を2人に売ることを二重売買とか,二重譲渡[じょうと]と呼びます。民法を勉強しているとよく出てきますので憶えておいてくださいね。

ちなみに,譲渡と言われると,なんか無料であげたようなイメージがありますよね?

確かに無料であげることも譲渡の例の1つなんですが,民法を学習しているときに出てくる譲渡は、どちらかというと売買が譲渡の代表例なので,譲渡と言われると,売買をイメージしておくと良いですよ。

【図表1:二重譲渡】

二重譲渡

そしてこのとき,BさんとCさんは,

「このデジカメは私の物だ!」

「いいや,このデジカメは私の物だ!」

と主張し合いますよね。

このように,権利の関係を第三者に主張することを「対抗する」と言います。

ですので,例えば「BはCに対抗できる」と言われたら,「BはCに『これは私の物だ!』と主張できる」という意味になります。

そして,この主張し合う関係を「対抗関係」といいます。

この二重譲渡の例でしたら,BとCが対抗関係になっていますね。

ここで,「第三者」という語が出てきましたので,これを説明しておきますね。

この「第三者」という語についても,後々判例を見ながら深く学ぶことになるのですが,ここでは大まかに理解をしておきましょう。

まず,Bさんは,Aさんと売買契約を結びましたので,Bさんから見てAさんは契約当事者であって,第三者ではありません。

しかし,Bさんから見てCさんは契約当事者ではありませんね。

だから,Bさんから見てCさんは,「第三者」になります

また,Cさんは,Aさんと売買契約を結びましたので,Cさんから見てAさんは契約の当事者で,Bさんは契約当事者ではありませんね。

だから,Cさんから見てBさんは,「第三者」になります

【図表2:第三者とは】

第三者とは

さて,話をBさんとCさんの対抗関係に戻しまして,この場合,BとCのどちらにも「これは私のデジカメだ!」と主張することを認めてしまうと,いつまで経っても結論が出ませんよね。話が堂々巡りになってしまいますから。

ですので民法では,「これは私のデジカメだ!」と主張するためには,「ある要件」を備えなければならないとしたのです。

この「ある要件」のことを,主張する(つまり対抗する)ために必要な要件ということで,「対抗要件」と言うのです。

そして,この対抗要件は,動産と不動産とでは異なりますので,まずは動産からお話しましょう。次の条文を見てください。

第178条

動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない

なんとなく分かりました?

キーワードは「引渡し」ですね。

動産では,この「引渡しが対抗要件とされているんです。

では「引渡し」とは何か?ですが,実は引渡しには4つのパターンがあるんです。

でも今は細かいので触れずにおきまして,

とりあえずのイメージとしては,「デジカメ(動産)を現実に受け取ること」と理解しておけば良いでしょう。

ですので,さっきの例でしたら,BさんとCさんのうち,先にAさんからデジカメを受け取った方が,「これは私のデジカメだ!」と主張できて,受け取っていない方は,もはや「これは私のデジカメだ!」と主張できないんです。

だから,例えばもしBさんが先にデジカメを受け取れば,Bさんは「これは私の物だ!」と主張できて,Cさんはもはや「それは私の物だ!」と言えなくなります。

その結果,そのデジカメはBさんの物になります。

もちろん,反対にCさんが先にデジカメを受け取れば,Cさんは「これは私の物だ!」と主張できて,Bさんはもはや「それは私の物だ!」と言えなくなります。

結果,そのデジカメはCさんの物になるということです。

【図表3:動産の対抗要件】

動産の対抗要件

このようにして,民法では動産の対抗問題を解決しているんです。

「いやいや,この二重譲渡っていうヤツ,つっこみどころ満載やねんけど?」

はいはい,やはりそうきましたね(笑)

そうなんですよ。実は,この二重譲渡って,理解しにくいポイントをいろいろ抱えているんですよ。

そのすべてを,この入門講座でお話することは,入門講座の趣旨に合いませんので,ここでは2点だけお話しておきますね。


まず1つ目は,Aさんは,Bさんと売買契約を結んでおきながら,Cさんとも売買契約を結んでいますよね。この2つの売買契約は,どちらも有効として扱われるんです。

「なぬ?!Bに売ったら,Cには売れないじゃないか!だからCとは売買契約を結べないんじゃないの?」

たしかにそう思いますよね。

なんか気持ち悪い,変な感じが心に残りますが,矛盾するような内容の2つの債権でも,同時に成立するんですよ。

債権にはこのような特徴があるんです。

この点,物権は違うんです。両立し得ない2つの物権が成立しないんです。これを一物一権[いちぶついっけん]主義と言います。

例えば,デジカメがBさんの物(つまり所有権がBにある)ならCさんの物ではないし,Cさんの物ならBさんのものではないんですね。こっちの方が分かりやすいですね。

とにかく,債権は両立し得ないような内容のものでも,有効に成立するんだということを憶えておいてください。


そして2つ目は,例えばAがBとCにデジカメを売る契約を結んで,Bが引渡しを受けたとすると,デジカメを買う契約を結んだのにデジカメが手に入らなかったCさんはどうするのか,という問題です。

これについては,Aさんが契約違反を侵したということで(これを債務不履行といいます),契約を無かったことにしたりとか(これを契約解除といいます),損害賠償を請求したりとかすることで処理します。


以上で動産の対抗要件について説明を終わりますが,どうでしたか?

この二重譲渡の問題は,色々な角度から考えなければなりません。ですので,民法の複雑さや難しさとともに,面白さや興味深さを味わうことができるとも言えます。

民法を学び始めてまだ間が無い方にとっては,理解するのに苦労するかも知れませんが,根気よく繰り返し図を見ながら説明を読んで,理解を深めていただきたいと思います。


(終わり)

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