民法の全体像「給付」
ここは、民法の全体像「給付」を講義している教室です。
今回は,給付という法律用語についてお話しますね。
				さて,この給付という用語も,前回お話しました債権の目的と同じように,日常用語のイメージとは異なるものです。
				日常用語としてなら,給付と言われると
				「物か何かを供給・交付すること」
				なので,
				「物をだれかに与えている」
				ようなイメージがありますよね。
			
				「AはBにデジカメを給付した」
				と言われると,
				「え?!AさんはタダでBに与えたん?」
				と思います。
			
				でも,民法の用語としては,意味が違うんです。
				民法では,給付とは,債務者が債務に従って行う行為のことを言うんです。
			
				毎度おなじみの例でいうと,Aさんが持っているデジカメをBさんに3000円で売る契約が結ばれたとすると,
				AさんがデジカメをBさんに渡すことを給付といいますし,
				Bさんが代金3000円をAさんに支払うことも給付といいます。
			
【図表1:給付とは】
			そして,この給付という用語は,「行動しない」ことを表す場合もあります。
				例えば,隣どうしで住んでいるCさんとDさんがいまして,Cさんは,住んでいるところから見える景色を邪魔されたくないので,Dさんと
				「CはDに100万円渡すから,Dは建物を3階建て以上にしない」
				という契約を結んだとします。
			
				このとき,Dの給付は「3階建て以上の建物を建てない」という行動?っていうか,不行動?そんな言葉は無いですね(^^ゞ
				まあ,それがDの給付になるわけです。
			
				このように,行動しないことを給付ということもあるわけです。
				ちなみに,何も行動しないことを「不作為」と言いますので,こんな給付を「不作為を内容とする給付」と言ったりします。
			
【図表2:不作為を内容とする給付】
			
				「ねえねえ,クマべえ先生」
				
				「はいはい,なんでしょう?」
				
				「Aさんの給付って,Bさんにデジカメを渡すことですよね?」
				
				「そうですね。」
				
				「Bさんの債権の目的って,デジカメを渡すことですよね?」
				
				「そうですね。」
				
				「じゃあ,給付と債権の目的って,同じことじゃないんですか?」
				
				なるほど,そこは理解しにくいところですよね。
			
			「給付」と「債権の目的」との違いは,
				給付とは,債務者の行いのことで,
				債権の目的は,債権の内容のことです。
			
				つまり,給付とは,債務者はどんな行動をするの?というような「債務者の行動」に注目した言葉で,
				債権の目的とは,どんな内容の債権なの?というような「債権の中身」に注目した言葉なんです。
				注目しているポイントが異なるんですね。
			
【図表3:給付と、債権の目的】
			ちなみに,もっとややこしいことを言いますと,「給付内容」という語は,給付の内容、つまり「給付の中身」のことを表しますので,例えば,Aの給付内容と言われたら「Bにデジカメを渡すこと」ことがAの給付内容です。
				もう,こうなると,Aの給付内容と,Bの債権の目的とは,ほぼ同じ意味になりますね。
				そこは区別できなくても,今後民法の学習を進める場合でも,それほど理解に影響は無いので,今は気にしなくても大丈夫ですよ。
			
(終わり)
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