法律入門講座「行政法【行政行為の分類】」ークマべえの生涯学習大学校ー

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行政法「行政行為の分類」

ここは、行政法「行政行為の分類」を講義している教室です。
ここでは、行政行為の分類について、お話をしていきます。


前回の「行政行為の全体像」の終わりの方で、行政行為にはいろいろあることを学びました。
これらの行政行為は、様々な角度から分類してまとめることができます。
今回は、その分類について、2つお話しをしましょう。


1.法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為

1つ目の分類は、法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為との分類です。

「何じゃこれ~?!漢字だらけで目がチカチカする~!」

はい~(^^)。私も初めてこの分類を勉強したとき,そう思いました。
でも,変に「難しそう」と先入観を持たずに,肩の力を抜いて見ていってくださいね。

さて,この分類を理解するためには、民法で学ぶ「法律行為」という用語の知識が必要ですので、まずは法律行為についておおまかに説明しますね。


(1)法律行為

例えば、「○○法第1条:行政庁は、危険な建物を持っている人に、建物を壊せと命令することができ、命令された人は壊す義務が発生する。」という法律があったとします。

そして、行政庁のAさんは、一般の人Bさんの建物が、いまにも崩れ落ちそうであることを発見したので、この法律に基づいて「Bさん!あなたの建物は危険です。すぐに壊しなさい!」と命令したとします。

このときの行政庁Aさんの心の中を分析してみると、次の図表1のようになります。

【図表1:行政庁Aの分析】

行政庁Aの分析

では、この図について説明しますね。

行政庁Aは、初めに「Bの建物は危険だな」と心で思います。これを動機と呼びます。
後に、行政庁Aは「建物を壊せ!」と命令するのですが、そのように命令をした理由の部分のこと動機といいます。

次に、行政庁Aは、この動機に基づいて「Bに、建物を壊す義務を発生させたい」と心で思います。
これは、例の法律でいうと「(命令された人は)壊す義務が発生する。」の部分を発生させたい、と思っているんですよね。

この「壊す義務が発生する。」の部分を、難しい用語でいうと法律効果といいます(あとに出てくる図表3を参照)。
ですので、この「法律効果」という用語を使って行政庁Aの心の中を説明すると、法律効果を発生させたいと思っている、と言えますね。

このように、法律効果を発生させたいから「Bに命令しよう。」と、心の中で思うこと意思と呼びます。

そして、行政庁Aは、この「意思」に基づいて「建物を壊せ!」とBさんに伝えます。このことを表示と呼びます。
つまり、行政庁Aが心の中で思った「意思」を、相手方のBさんに伝えることを「表示」というのです。

この行政庁Aの動きのうち、意思と表示を合わせて意思表示と呼ぶのです。

これらをまとめると、次の図表2のようになりますので、確認しておいてください。

【図表2:意思表示のまとめ】

意思表示のまとめ


次に、先ほど例にあげた法律について説明します。

この法律は、さっき意思表示のところで説明しました法律効果と、その法律効果を発生させるための条件とでできています。

例えば、上の例の法律ならば、「行政庁危険な建物を持つ人に『その建物を壊せ!』と命令する」と、命令された人は「壊す義務が発生する」のでした。

つまり、この青文字の部分の条件がそなわると、命令された人は「壊す義務が発生する」という法律効果が発生するのです。

この青文字の部分の条件のことを、法律要件[ようけん]といいます。

次の図表3で確認してみてください。

【図表3:法律要件と法律効果について】

法律要件と法律効果について

そして、法律要件には、法律によっていろいろな種類のものがあるのですが、それらの法律要件のうち、行政庁Aの意思表示を伴っている法律要件のことを、法律行為というのです。

例えば、図表3の例の法律では、「行政庁が危険な建物を持つ人に対して『建物を壊せ!』と命令する」ことが法律要件でした。

この法律要件には、行政庁の意思表示が伴っていることは、図表1のところで学びましたね。

ですので、「行政庁が危険な建物を持つ人に対して『建物を壊せ!』と命令する」ことは、法律行為にあたります。

さあ、ここまで大丈夫ですか?話についてこられましたか?
法律行為という用語は抽象的であるため、民法という法律の中でも、特に理解するのが難しいところです。
そういうわけで、「なんとなく解ったような気がするかな?」という程度の理解ができていれば良しとしましょう。
そして、あまり深入りしないで、どんどん学習を先に進めましょう。


(2)法律行為的行政行為

では次に、法律行為的行政行為について説明します。

この用語は、さっき説明しました法律行為について、おおよそのことが理解できていれば、そんなに難しいものではありません。

法律行為的行政行為とは、直訳すると法律行為みたいな行政行為という意味です。
つまり、いろんな行政行為のうち、行政庁の意思表示が伴っている行政行為のことをいうのです。

例えば、さっきの図表1の例で出てきた「建物を壊せ!」という行政行為(これを「下命」というのでした。)は、行政庁Aの意思表示が伴っていましたね。
ですので、この例は法律行為的行政行為に分類されます。

あと、下命以外にも、前回の終わりの方で学習しました「禁止」「許可」「免除」「特許」にあたる行政行為も、法律行為的行政行為に分類されます。
これらはみんな、行政庁の意思表示が伴う行政行為だからです。


(3)準法律行為的行政行為

ということで、勘の良い方はもう推理できているかも知れませんが、準法律行為的行政行為について説明をします。

準法律行為的行政行為とは、いろんな行政行為のうち、行政庁の意思表示が伴っていない行政行為のことをいうのです。

例えば、自動車を持っている方はよくご存知だと思いますが、自動車を持っていると、行政から「自動車にかかる税金を○○万円支払ってください。」という通知書がきます。

この通知は、「税金を払え!」という命令を、ただお知らせしているだけのものですが、行政が一方的に送りつけてくる(?!)ものなので(言葉が悪くてすみません)、行政行為の1つとして考えられています。

ところが、この通知は、行政行為の1つといっても、「税金を払え!」という命令と違って、行政庁の意思表示を伴っていません
行政庁は、あくまで法律に基づいてお知らせをしただけであって、何か法律効果の発生を期待して通知したのではないからです。

ですので、この通知という行政行為は、準法律行為的行政行為の1つにあたります。

次の図表4で、イメージを確認してみてください。

【図表4:準法律行為的行政行為のイメージ】

準法律行為的行政行為のイメージ

それでは、ここまでを次の図表5にまとめていますので、頭の中を整理しておきましょう。

【図表5:法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為のまとめ】

法律行為的行政行為と準法律行為的行政行為のまとめ

2.裁量行為と覊束行為

2つ目の分類は、裁量[さいりょう]行為と覊束[きそく]行為との分類です。

例えば、「○△法第1条:警察官は、駐車違反の区域に違法駐車をした人に対して『車を止めるな!』と命令することができる。」という法律があったとします。

でもこの法律は、内容があいまいなので、具体的にどんな場合に警察官は『車を止めるな!』と命令できるかは不明ですよね。
駐車違反の区域に、1時間以上車を止めていたときに限って命令できるのか、それとも1秒でも車を止めていたら命令できるのか、この法律からは読み取れないわけです。
このような場合、警察官は、その場その場の状況に合わせて、臨機応変に対応することになりますね。

警察官は、「この違法駐車を、ほおっておいたら危険だな」と判断すると、1秒でも車を止めた人に対して「止めちゃダメでしょ!」と命令をすることになるでしょう。
反対に「危険性はほとんど無いな」と判断すると、1時間ほど大目に見てあげて、それ以上車を止めている人に対してだけ「そんなに長くここに車を止めてはダメですよ!」と命令することになるでしょう。

この例で、警察官が自分の判断で命令するかどうかを決めたように、人の個人的な考えによって判断し、問題を処理すること裁量といいます。

そして、行政行為のうち、この裁量が認められているもの裁量行為というのです。


また、例えば「△△法第1条:警察官は、駐車違反の区域に違法駐車をした人に対して、人通りが1時間あたり1000人以上の場合は1分以上違法駐車をしたときに『車を止めるな』と命令することができる。人通りが1時間あたり500人以上1000人未満の場合は~(以下省略)」
というような法律のように、警察官に自由な判断権をほとんど与えていないような、言い換えると裁量がほとんど認められていないような行政行為覊束行為というのです。

(普通、警察官は行政庁ではありませんが、「行政庁の命を受けた警察官が…」なんて言ったら分かりにくくなるので、あえて警察官を例としています)

次の図表6で、イメージを確認してみてください。

【図表6:裁量行為と覊束行為とのイメージ】

裁量行為と覊束行為とのイメージ

以上、行政行為の分類を2つ学びました。

「ふぅ。とにかく用語が難し過ぎるよ。なんかモチベーションが下がってしまうなぁ。」
「ホントに私にも行政法をマスターできるのかな?不安になってきたよ。」

これがたくさんの方の本音だと思います。

行政法は、初めて学習したときは、ホントに不安になるものです。でも、外国語と同じで、言葉に慣れてくれば、必ずマスターできます。大丈夫です。
あせらず、何回も繰り返して文章を読み直して、少しずつ用語に慣れていってくださいね。
根気よく、じっくりと、繰り返すことが行政法をマスターするコツですよ!


(終わり)

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